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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(9)

チョッとためになる健康のお話(9)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

歴史を変えてしまう感染症

暑い暑い夏も終わり、秋に入りました。

コロナ感染の全数把握調査をしなくなってから、増えているのか減っているのか、よくわかりませんが、以前よりも感染したという話を聞くことが多くなりました。そういう私もこの夏、初めて感染しました。相当気を付けていたのでショックでした。実は、コロナが始まる前から、時々高熱を出して寝込むことがありました。その病名は「尿路感染症」です。何らかの原因で尿管に細菌が侵入して炎症を起こす病気です。風邪のように悪寒がするのですが、喉も痛くならないし、咳も出ません。ただ、排尿時に痛みが伴い、尿が濁ってきます。コロナが始まってから2度高熱が出て、もしやと思いましたが陰性でした。

しかし、今回は少し喉の痛みがあり、味覚もおかしい。決定的だったのは妻と娘が感染したことです。そこで今回は感染症についてお話しします。

コロナウイルスが世界中で猛威を振るっていた時、ジャレド・ダイアモンドが書いた『銃・病原菌・鉄』という本が注目を浴びました。この本が書かれたのは1997年、日本語に翻訳されたのが2000年。朝日新聞が2010年に、過去10年間に出版された書籍のベスト50冊を選定し、その中で見事1位に選ばれました。

同書によると、1万3000年前から人類は徐々に狩猟採集から農耕に生活を切り替え、定住するようになりました。穀物や豆類を栽培し、大型哺乳動物を家畜にし、生産性を高めることによって、小規模血縁集団から数百人単位の部族社会に拡大しました。やがて、数千人単位の首長社会が生まれ、5万人以上の国家へと発展していきます。食料生産の効率が上がり、余剰が生まれると、分業体制が始まり、職人、官僚、軍人などの職業が出来、奴隷制も生まれます。文字、火薬、磁石、印刷も発明され、ユーラシア大陸やアフリカ大陸の北緯30度から50度の範囲でそれらの技術は短期間のうちに伝播していきました。それは、気温、日照時間、降雨などの条件が似ていたからです。そして、牛、馬、豚、鶏などの家畜から、人口密度の高い所で、人間にうつる伝染病が発生するようになりました。人類は、部族や国家間で行われる戦争と、伝染病によって、多くの生命を失いました。また、戦争で得た捕虜を奴隷として働かせることによって、高度な社会を築いてきました。

特に象徴的だったのは、1532年、168人のならず者部隊を率いたスペインのピサロが、インカ皇帝アタワルパを捕虜にし、インカ帝国を滅ぼしてしまったことです。圧倒的な武器を持っていたこともありましたが、スペイン人が持ち込んだ天然痘が先住民の95%を葬り去ってしまったのです。疫病に免疫のある人たちが免疫のない人に病気を移すことによって、アメリカ大陸の歴史を変えてしまいました。もし、アメリカ大陸に家畜に出来る大型哺乳動物が生息していたら、歴史は変わっていたかもしれません。医学の発達によって、人類は伝染病を克服してきました。その要諦は、免疫をいかに獲得するかです。

新型コロナウイルスも免疫獲得がゴールとなります。次回は、先月の続きの「GI値」についてご紹介いたします。