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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(16)

チョッとためになる健康のお話(16)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

「自己免疫力」を上げよう

春らんまん、新緑が美しく、あちらこちらに花が咲き誇っていますね。爽やかな風の中、こいのぼりが子供たちの健やかな成長を願って泳いでいます。

皆様、「奇跡のりんご」を作った木村秋則さんをご存じでしょうか。青森県でおいしいりんごを作ろうと努力している方です。木村さんの奥さんは、農薬散布をすると寝込んでしまうほど、農薬に敏感でした。それで、農薬を使わずに栽培する方法はないかと考えて、自然農法に取り組みました。自然農法で米や野菜を作った例はありましたが、りんごは誰も成功していません。様々な方法を試し、何度もチャレンジするものの害虫が群がり、病気に侵され、りんごの花は咲かず、枯れ始めました。収入はゼロとなり、アルバイトや出稼ぎで糊口をしのいでいました。

父親や家族も応援しましたが、7年目に精も根も尽き果て、ついに自殺を図ります。夜中にロープを持って山奥に入っていき、適当な木の枝を見つけてかけようとしました。ところが、うまくかからず、思いもかけないところに飛んでしまいます。ロープを拾いに行くと、そこに立派なりんごの木(実は栗の木だったことに後で気がつきます)を見つけます。木村さんは、農薬や肥料もないのにどうしてこんなに立派なのだろうと不思議に思いました。その時、足元の土がふかふかなのに気づきます。自分の畑と全く違っていたのです。その土は温かく良いにおいがしました。これが答えだったと気づくのです。

木村さんは、急いでその土を持ち帰って研究を始めます。そして、山と同じ環境にするため、雑草は生え放題にし、大豆を植えました。大豆は根を深く張るので土を柔らかくする効果と、根粒菌の作用で空気中の窒素を土中に蓄えて豊かにする効果があります。

そして2年後、木は見る見る元気になり、花が咲いて、ついに小さなりんごが2個実ったのです。

木村さんのりんごが「奇跡」と言われるゆえんは、世界で初めて農薬も化学肥料も使わずに生産できたことと、何年たっても腐らず、そのまましぼんでいくためです。自然農法で作られた作物は「自己免疫力」が強いようです。農業における土の大切さがよくわかります。

農薬を使うと害虫や病原菌を殺すことができますが、益虫や良い菌も殺してしまいます。化学肥料を使うと一時的に収量は上がる反面、土地はやせ、ミネラル分の少ない植物が生まれるのです。

人間の健康にとって、土の役割をしているのはどこの臓器でしょうか。

私は腸ではないかと思います。胃で消化した食べ物を、腸で分解して吸収します。そして、腸内には100兆個ともいわれる菌が棲みついて、人間に必要な成分を作り出しています。発酵食品や食物繊維などです。そこに医薬品や添加物が入ってくると、どんどん善玉菌が減り、悪玉菌が増えます。酸化した油や過剰な糖質、ミネラルやビタミン不足の食品によって、必要な成分が作られなくなってしまうのです。

私たちの「自己免疫力」を上げるためにも、「腸」を良くしていきましょう。