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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(17)

チョッとためになる健康のお話(17)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

塩分と免疫力の悩ましい関係

ゴールデンウィークの最終日、東京ドームでボクシングの4団体統一王者・井上尚弥が、ルイス・ネリをノックアウトで下し、タイトルを防衛しました。圧倒的なパフォーマンスは多くの日本人に感動を与えました。まさに「モンスター」のニックネームにふさわしい戦いぶりです。初回早々にネリのパンチを受けて、キャリア初のダウンを喫しましたが、その後は冷静にネリを追い込み、6回にTKOで完璧な勝利を掴みました。

こういう戦い方を見ていると、練習時も体重を完璧にコントロールしているように思いますが、対戦の1カ月前から減量に入り、通常の体重62㎏から、スーパーバンタム級の55.34㎏にまで落とすそうです。トレーニング中はカロリーにこだわらずよく食べて筋肉を付け、パワーをアップします。当然体重も増えますが、そもそもパワーがなければ相手を一発でノックアウトできません。減量に入ると筋肉を落とさず、脂肪分を極限までそぎ落としていき、最後は水分も制限して制限体重まで落とします。試合の前日の計量が終わったら、爆食いをして、12ラウンド戦えるスタミナをつけます。これで5㎏ぐらい増えるそうです。

減量中はできるだけ塩分を控えます。血中に塩分が増えると、血中成分を管理している腎臓が、尿として出す水分を抑えて、血液中の水分を増やし、塩分濃度を下げます。そうすると、むくみが増え、体重も落ちません。ダイエットにとって塩分は要チェック成分です。

人間の体の水分量は、新生児で75%、4~5歳児で70%、成人女性が50%、成人男性が60%、老人は50%と言われています。赤ちゃんの肌はムチムチでハリがあります。歳をとって肌のハリがなくなり、シワが増えるのは水分量の変化によります。成人女性は成人男性よりも水分が10%も少ないのは意外な気がしますが、逆に男性よりも脂肪分が10%多いので、シワが目立たないのかもしれません。

ところで、血中の水分が多くなると血液全体の量も増えます。すると血液を体全体に巡らす心臓の圧も高くなります。そのため高血圧になるのです。高血圧の人に減塩を勧めるのはこういう理由があるのです。寒冷地に住んでいる人が塩分の多い食事を好むのは、新陳代謝を高めて体温を上げるためです。逆に塩分が少なくなると、新陳代謝が落ちて、体温も低くなります。

免疫細胞が正常に働ける体温は36.5度ですが、そこから1度上がると免疫力は5~6倍上がり、逆に1度下がると30%下がると言われています。高血圧を恐れて塩分を控えすぎてしまうと、体温が下がり、免疫力も落ちてしまう。悩ましい問題です。

塩分のナトリウムは大事なミネラルですが、過剰だと害を及ぼします。このナトリウムを体外に排泄するミネラルがあります。それがカリウムです。そして、カリウムをたくさん含んでいる食品が果物と野菜です。果物ではバナナ、キウイフルーツ、メロン、アボカドなど。野菜ではほうれんそう、小松菜、ブロッコリー、かぼちゃ、サツマイモ、サトイモ、長芋などです。カリウムは水溶性ですから、煮たり茹でたりすると水に溶け出します。ですから、煮汁ごと食べるようにしましょう。