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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(19)

チョッとためになる健康のお話(19)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

「熱波」をサウナで乗り越える

4年に1度(今回は3年)のオリンピックが始まりました。フランスは日本と7時間の時差がありますから、決勝などの良い試合は夜中となるため、寝不足になりますね。暑い時期の睡眠不足は体にこたえますので、ご注意ください。

7月、8月、9月は熱中症に注意が必要です。日本列島が熱波に包まれる感じです。ところで「熱波師」という職業をご存知でしょうか。

日本は現在、第3次のサウナブームに入っています。第1次は1964年、東京オリンピックの選手村にサウナが設置され、そこからブームになりました。第2次は1980年代、健康ランドやスーパー銭湯が開業し、ブームとなりました。現在のブームは2011年、タナカカツキさんの『サ道』という本が人気となり、2019年にテレビドラマ化され、火がつきました。

「熱波師」とは、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させ、タオルなどであおいで入浴者に熱風を送る人です。ただ熱風を送るだけでなく、音楽や映像と組み合わせたエンターテインメントになっていて、人気の「熱波師」には「追っかけ」がついているそうです。

現在、サウナ人口は約1800万人いるそうですが、本場の北欧では生活の一部として根付いています。日本のお風呂感覚ですね。その理由は、健康増進になるからです。

私たちの体には神経と血管とリンパ管という3種類の線が通っています。東洋医学ではもう一つ、経絡(けいらく)という気の通り道を加えます。神経は大まかに感覚神経と運動神経と自律神経に分けられます。その中で、自律神経は消化や血液循環、内分泌などを自動で動かしています。人間の意思と関係なく動いているのです。正常に動けばいつまでも健康でいられますが、異常になると病気になってしまいます。特に精神的、物理的ストレスの影響を受けます。

異常になった自律神経を正常にするのに、サウナが有効だと言われています。

まずサウナに入ります。高温の部屋に入ると、体温が徐々に上がってくるのですが、脳や主要臓器の体温(深部体温)は一定に保たれます。そうしないと生命を維持できなくなるからです。そのため、毛穴を開いて汗を出し、気化熱で表面温度を下げるように交感神経が働きます。あまり無理をせず、我慢できる範囲で外に出て、水風呂に入ります。すると、毛穴が締まり、冷気が体内に入っていかないように筋肉が緊張し、血流も抑えるように交感神経が働きます。ここでもあまり無理はせず、我慢できる範囲で水風呂から出ます。そして、外気に当たりながら横になるか、ゆったりと腰掛けます。すると交感神経が緩み、副交感神経が働き始めます。実は、サウナや水風呂で極端な刺激を受けると、交感神経が働いて脳内からアドレナリンという興奮物質が分泌されます。水風呂から出て休憩していると、交感神経が休んで副交感神経が働き始めるのですが、血中にはまだ少しアドレナリンが残っていて、何とも言えない気持ちの良い状態が生まれます。この時の状態を「ととのう」と言います。

サウナは一時的に交感神経を高めた後、ゆっくりと副交感神経を働かすので、疲労回復、免疫向上、美容、老化防止などに効果的です。適度なストレスは体を元気にしてくれます。

サウナで大事なのは無理をしないこと。今年はサウナで熱波を乗り越える(?)。