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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(21)

チョッとためになる健康のお話(21)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

柔軟体操で健康増進

今年の夏も暑かったですが、パリオリンピックでの日本人選手の活躍により、国中が盛り上がりましたね。日本のお家芸は柔道、体操、レスリング、水泳と言われています。このところ水泳はパッとしませんが、卓球やフェンシングが力をつけてきて、楽しみが増えました。スポーツに関心が向くと、同じことをやってみようという人も増えるので、健康増進に役立ちます。

運動に必要なのは、筋肉のパワーと柔軟性。パワーは負荷をかけて筋繊維を断裂させ、再び結合する時に太くなります。しかし、年齢と共に細胞の新陳代謝が落ちてくるため、筋肉は付きにくくなってきます。ただ、柔軟性は何歳になってもトレーニングさえすれば向上します。

私たちの体は約200個の骨でできていて、骨は260個の関節で繋がっているといわれています。その関節を支えるのが筋肉です。筋肉は年齢と共に硬くなっていきます。「人間は硬くなって死んでいく」という言葉もあるほどです。また「廃用性萎縮」といって、使わないと硬くなります。病気やけがで入院して寝たきりになると、筋肉が細く硬くなって、リハビリをしなければ元の生活に戻れなくなることがあるのです。もう一つは「過用性委縮」といって、逆に使いすぎることによって硬くなる場合もあります。長時間同じ姿勢を続けて、腰痛になったり、肩こりになったりすることです。

関節の中で最大のものが膝関節です。歳を取ると膝が痛くなるのは、かかる負荷が大きいからです。しかし、もっと大事な関節があります。

それが「股関節」です。ちょうど太ももの外側を上の方に触っていくと、グリグリした骨があります。それを「大転子」といいますが、股関節はそのチョッと上の中側にあるため、直接触ることはできません。骨盤のくぼみに大腿骨の先端がはまっている状態です。これは肩関節と同じで、前後左右だけでなくひねることもできる最も可動域が広い関節です。逆に言えば、あらゆる方向から筋肉で保護されていないと外れてしまう可能性があります。

先月お話ししましたが、私はギックリ腰の常習者です。そのため、いろいろな予防法をやってきました。その一つが「真向法(まっこうほう)」といって、たった4つの柔軟体操で健康を増進する方法です。

明治4年に福井県に生まれた永井津(ながいわたる)という実業家がいました。事業も順調だった42歳の時、突然脳溢血になり、半身不随となってしまいます。奈落の底に突き落とされた永井は、実家の勝鬘寺(しょうまんじ)に帰り、人生に対する希望を見出そうと、一生懸命「勝鬘経」を唱えました。その中に礼の仕方が書いてありました。永井は、まず形から入ろうと思い、「頭面接足礼」に取り組みます。この礼は、楽座(らくざ)という座り方をします。昔の武士の座り方で、あぐらの形ですが足は組まず、両方の足の裏を合わせるように座るのです。体の硬い人は膝が床から浮いてしまいますが、浮かないようにし、さらに腰骨を立てて背筋をまっすぐに伸ばします。その状態で背中を曲げず、腰から倒して顔が地面につくように曲げます。

永井は半身不随のこわばった体に鞭打ちながら、激痛をこらえて毎日毎日鍛錬しました。「頭面接足礼」を完成するのに3年の歳月を要しました。ところが、そのお陰で体が元通りに動くようになったのです。この続きは次号にて。