機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(4)

人生を豊かにする金言名句(4)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

人間万事塞翁が馬

「人生の禍福は常ないものであるから、福があったとて喜ぶに足らず、禍(わざわい)があったとて悲しむに当たらない」(三省堂『辞海』1952年刊)という意味が「人間万事塞翁が馬」のたとえです。

初めて知ったのがいつだったか、おそらく小学校の国語の教科書に中国の馬の話が出ていたのだろうと思います。その授業を受けていた時、「なるほど!」と、つかえていたものがストンと落ちるように納得できました。

「塞翁(さいおう)」とは、いくつかの辞典によれば、「北方の国境のとりで(『村』とする説も)にいる老人」のこと。その老人が飼っていた馬に起こった出来事を元にしています。『淮南子(えなんじ)』という紀元前にまとめられた中国の思想書にある故事の一つです。

同じ意味のことわざは他にもあります。「禍福はあざなえる縄のごとし」。てっきり日本のものかと思っていましたが、中国の『史記』にあるそうです。これも紀元前の歴史書。「福と禍とが互いに表裏転変するさまを、あざなった縄にたとえた」(『辞海』)ものです。本当にそう思います。

私には強烈な体験があります。今から15年から20年ほど前のことです。例えば、地方出張した時。旅先では、仕事を無事に終えなければならないという緊張感がある一方で、非日常の空間が気持ちを多少リラックスさせてくれました。たまには豪華な接待を受けることもあり、気持ちが高揚することも。そして、宿泊先で風呂に入ってのんびりすると、自宅での入浴とは違う、別世界にいるような感覚を味わったものです。

ところが、そんな「福」(自分が「福」だと感じる時)の後に、必ずと言っていいほど「禍」が巡ってくるのでした。仕事でミスをするとか、良好な人間関係にスレ違いが生じるとか、ケガをするとか。そんな「禍福」が何度も何度も繰り返され、私は学習して心の備えをしたものでした。

「禍福はあざなえる縄~」を座右の銘にする有名俳優がいますが、私の人生にもぴったり合うと感じています。