人生を豊かにする金言名句(13)local_offer金言名句
ジャーナリスト 岩田 均
人と屏風は直ぐには立たぬ
大手新聞の地方版に、ピアニスト姉妹のコンサート案内が載りました。入場無料だけれど、ウクライナ支援のための募金を希望しているとありました。家族が公演に行ってきて、「とても良かった。曲目もなじみのあるものばかりだった」と喜んでいました。
日常生活でできない感動的な体験は、世知辛い世の中で窮屈になった生活リズムなどをリセットしてくれるものです。特に、芸術は創造性を刺激してくれます。アーチストらの作品に触れることで感性が触発されたり磨かれたりします。
以前、ある劇場で舞台を鑑賞しました。大阪・船場の老舗木綿問屋で展開される人間模様の上方喜劇でした。笑いあり涙あり。その中で、ある言葉にハッとしました。その一コマは――。ボンボン育ちと勤勉な青年の二人は、一人の女性をめぐって恋敵。けんかになります。ボンボンは殴られていないのに急に「痛い、痛い」と言い出し、「なぜ殴った?」と相手を追及します。そこへ登場したのが、加害者にされてしまった青年の上司。事情を聞いて、彼に向かって言い放ちます。
「”殴っていない”というお前がたとえ正しくても、相手は社会的地位のある家の子息だ。社会はどっちの言うことを信じるのか」
こういう不条理はよくあるものです。ですが、その上司はこう続けます。「だから、お前は実力をつけて、実績を積んで、社会に認められるようになることが大切なんだ」と。今は忍耐する時だぞというわけです。
今回のことわざは、「屏風は折り曲げなければ立たないのと同じように、人もただ正直なだけでは世の中を渡っていけない」(三省堂『故事ことわざ・慣用句辞典 第二版』)という意味です。とはいえ、現実は常に努力が求められますね。