機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(24)

人生を豊かにする金言名句(24)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

君子危うきに近寄らず

ふと思い出す苦い記憶とか、忘れたい体験というのはいくつかあるものです。私の場合、その一つが「卵事件」です。

都内に住んでいた時です。自転車でクリーニング屋に向かいました。店の前に着くと、何台も自転車が停めてありました。この日は風があり、頭の中で黄信号がともった(無意識ながら予測があった)のですが、その頃は若気の至りというか、何とかなるだろうと並べて駐輪しました。

その瞬間、自分の自転車が風にあおられて、隣の自転車にちょっと触りました。相手の自転車は、風にも押されて地面にバッタリ。重なる時は重なるものです。買い物かごには買ったばかりと思われるレジ袋があり、その一番上には「卵のパック」。当然、卵の何個かが割れました。ため息をつきながら、謝罪しようと店内で声を掛けたら…。「何やってんのよ! 気を付けなきゃいけないでしょ!」と持ち主の中年女性がものすごい剣幕。この言われようが一番こたえました。

”どうせ風で倒れていたよ”という責任転嫁の思いも湧いてきました。店員、客の全ての人が引いてしまい無言に。とりなしなどありません。直接の原因は自分にあります。ですが、風に文句を言いたい、相手の女性の怒鳴り声も納得できない…。自分の気持ちの行き場がなくなってしまうのを感じました。

弁償をしてその場を後にしましたが、どうにか自分を取り戻せたのは、”君子危うきに近寄らず、だろ!””停めるなら、ものすごく離せばよかったのに”と気づいてからです。以後、自分の中で”危ないよ”と教えてくれる感性を信じようと心がけました。全部が全部、その通りに行動できませんが、あいまいにしたまま放置しないようにと。反対のことわざとして「虎穴に入らずんば虎子を得ず」がありますね。

人生は岐路に立つことが結構あります。君子と言わないまでも、ことわざと上手に付き合っていきたいものです。