機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(25)

人生を豊かにする金言名句(25)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

群盲象を評す

寓話を元に彫られた壁絵。タイ北東部。

電気自動車(EV)をめぐるマスコミの記事や特集を読んでいると、不満を感じます。最近では読売新聞の連載がありましたが、取材の視点は、開発やメーカーの販売競争の状況がほとんど。ですが、ユーザー側の関心は充電器整備の問題でしょう。例えば、充電器を設置できない集合住宅。ここにはたくさんの居住者がいますが、給油ならぬ「給電」は、ガソリンスタンドに行って、そして30分もかかる。それに目をつぶったとしても、火力依存の発電の問題も。環境に優しいと言えない……。

そんなことを考えていたら、「群盲~」のことわざが浮かんできました。「多くの盲人が象をなでて、互いに自分のふれた部分だけを批評しあう」(金田一京助編『辞海』三省堂1952年刊)というわけです。事実が一つではないことを教える大変に分かりやすいたとえです。子供に教えるのに、例えば小学校で教師が黒板に象の絵を描いて、その周りに人が何人かいて――という場面が思い浮かびます。

情報も、真実の一面しか伝えないことがあります。ジャーナリストとして新米の頃、先輩からある事件の見方について、たしなめられたことがあります。記事に書かれていることが全てだと思い込んでいたので、「違うよ、それだけじゃないよ」と。同じ事件について後日、別の報道があり、新たな側面が浮上しました。先輩は「ほーら、あったでしょ」と。「目から鱗が落ちる」思いでした。今日なら、複眼的な見方が大切だと広く言われていますから、情報の表裏という考え方などは常識的でしょう。ですが、PCなどない40年以上前のこと、そのまま信じることが多かったものです。

情報戦では「ウソも100回言えば本当になる」とよく言われます。だから、故意に扱われることがあります。象の長い鼻だけを触って「これはホースだ」と宣伝される場合があるというわけです。目的は、真実を曲げようとしたり真実に目を向けさせないようにしたりするためでしょうね。「木を見て森を見ず」にならないようにしましょう。