人生を豊かにする金言名句(27)local_offer金言名句
ジャーナリスト 岩田 均
好事魔多し
野球の大リーグで超人的な活躍をする大谷翔平選手を思いながら、このことわざを考えました。大谷選手は9月、シーズン途中で離脱しました。誰もが残念に思ったに違いありません。成績は「投手として10勝5敗、打者として44本塁打、95打点、打率.304」。とんでもなく素晴らしいレベルです。
ですが、「(投手と打者の)二刀流」は、身体にかなりのストレスがかかっていたのでしょう。同月19日、所属球団が「大谷選手は、右肘の靱帯(じんたい)の手術を受けた」と発表。快進撃という良いことばかりが続くものではありません。一般に、アスリートはけがや故障を抱えながら競技に臨んでいる場合が多いと思いますから、その例に漏れない結果となりました。
ことわざの原典は不明ですが、日本や中国の古書によれば、「魔」は「麿」の文字が使われていたようで、例えば、中国のある脚本では「好事は更に磨多し」(小学館『故事成語を知る辞典』)と。全体としては「ものごとがうまく行きそうなときには、とかく邪魔がはいるものだ」(同)という意味になります
思い出す苦い経験の一つは中学の試験風景。それは100点満点を取り損ねた「魔」でした。不思議なほど問題がスイスイと解けて所要時間がかなり余ったくらい。内心で”やった!”と得意になっていました。一つの設問が気になっていたのですが、それを甘く考えてしまいました。
実は、その「魔」を振り払うチャンスはありました。テストを作成した教師が各教室を巡っていました。「質問はあるか」と言われ、私は一応手を挙げました。が、教師はそれに気付かず出て行ったのです。私は”まあ、いいか”と。ところが、その設問の配点10点が全滅。私は悔しい90点。本当に悔しい思いをしました。”あの愚は繰り返さない”。時々そう肝に銘じます。
「邪魔」とは他人がするだけとは限りません。動物かもしれませんし、自然現象もあり得ます。「今は好事だ」と気づいたら、覚悟をしたり、無難にやり過ごす準備をしたり。そういう対応が必要でしょうね。