機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(31)

人生を豊かにする金言名句(31)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

諸刃の剣

「両刃の剣」とも書きます。誤用として「どちらにも使える便利なもの」という解釈があります。正しくは「一方ではよい結果をもたらすが、他方では危険を招くおそれもある」(学研『現代新国語辞典改訂第六版』から)というたとえですから、気を付けたいものです。

原子力を考えてみましょう。このミクロの研究開発は人類の英知が結集して実現したものです。役立っているものの一つは電力。その恩恵は大きいです。半面、いわゆる「核のゴミ」問題は解決されていません。例えば、食事は「作って食べること」だけではありませんね。食器洗い、ごみ処理など後片付けがあります。同じです。電力を作っても「核のゴミ」はどうするのか。人類の大きな宿題です。核爆弾の問題も残っています。人間の創造性には、負の側面が付いて回ります。業の深さを思わされます。

別の例としては医薬品。即効性が期待できる一方で、副作用の心配があります。副作用ゼロという薬はないと、医療関係の書籍で明言する医師は少なくありません。有害な作用が起こってしまうと、患部ではない別の臓器や細胞までも痛めてしまうことがあります。まさに諸刃の剣です。遺伝子組み換え、生成AIなど、新しい開発に伴う宿題も次々と出現しますね。

「剣」といえば、ささやかな体験を一つ。新年に入って、実家の押し入れで日本刀を一振り見つけました。父から「あるよ」と聞いていました。先祖から受け継いだものですが、いざ相続するとなると正直腰が引けました。警察に相談することにしました。そうしたら、あっさり「こちらで預かります」と言われ拍子抜け。署に出向いて、書類1枚を書いて「処分」となりました。

伝統文化である美術品や工芸品を持つことに対する高揚感はあります。ですが、刀となると「危険物」ともいえるので、話は簡単ではありません。このへんのバランス感覚というのか、それこそ諸刃の剣のような感じでした。