機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(32)

人生を豊かにする金言名句(32)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

過ぎたるは猶及ばざるがごとし

儒教の経典で四書の一つの『論語』。その中の「先進」に出てくる孔子の有名な言葉です。「度が過ぎたものは、足りないものと同様によくない。ものごとには程よさが大切である」(小学館『故事成語を知る辞典』)という意味です。この名言から派生したのでしょうか、同義のことわざが「礼も過ぎれば無礼になる」。慇懃無礼(いんぎんぶれい)です。

これがピッタリなんだろうなという場面を何度か経験しました。自分では全くそのつもりがないだけに、相手の意外な反応に動揺させられてしまいます。ある時、普通乗車券だけでは乗れない電車を待つホームで。列を作るのが普通ですね。その時、3~4人の中年男性が最前列で固まって話し込んでいました。さらに、乗降する目印(ホーム上にある印)からは数メートルも離れていました。

電車が入ってくるのはもうすぐ。”言うべきか言わない方がいいか”と逡巡した末、言ってしまいました。「あのー、おせっかいですが、(待つ)場所が違いますよ。(目印を手で差しながら)こちらですよ」。その途端、不安は的中。「なにー、本当におせっかいだな」と。その人たちは、目印の所へ移動することもありませんでした。

”あーあ、やっちゃったよ、お前は下手だなあ”と自分を責める心の声がしました。言い過ぎず不足過ぎず。かなり気を付けたつもり。それでも通じない。そういうことはある…。そう分かっていても気持ちはへこみます。

儒教では「中庸」を説きます。日本人も偏らないことが好きです。ですが、なかなかうまくいきません。「塩梅(あんばい)」と言いますが、味のある日本語だと思います。ところが、生活の中では”どうも塩加減が悪いなあ”と反省することは多いです。そう、「加減」も使いますね。「湯加減が良い」などです。日本語の持つ奥深さはまるで旨味のよう。人間関係に良い出汁(だし)を効かせたいものです。