機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」愛の知恵袋 192

愛の知恵袋 192local_offer

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

魂と魂で語り合おう

マー君がくれた初めての電話

10月初めの土曜日の朝のこと。この日は仕事で福岡に行く予定になっていました。私は朝早くに起きて身支度をし、まだ眠っている孫のマー君やミー君の枕もとをそっと通り抜けて玄関に出ました。

娘は気が付いて、玄関先まで来て「気を付けてね!」と見送ってくれました。

駅に着いて乗車券とおにぎりを買って電車に乗り、車内で簡単な朝食を済ませて、今日の講演の資料に目を通していたとき、突然、スマホの音が鳴ったのです。

「朝早いのに…誰だろう?」と思いながら出てみると、「おじいさま…おはよう…」という声が聞こえました。これはマー君の声だ。何か問題でも起きたのかと思って、「おはよう!…何かあったの?」と聞くと、「いや…ただ…、お仕事頑張ってね…」と言うのです。

私が戸惑っていると、そばで聞いていたらしい娘が出て、「あのね、マー君が起きた時、おじいちゃんがいなかったの。それで、『おはよう!』と言えなかったので、それを言いたかったんだって!」と言うのです。「へえ~、そうなの。それはうれしいね、ありがとう!」と言ってスマホを閉じました。

これは私が孫のマー君からもらった初めての電話でした。言葉は少なく、たどたどしい電話だったけれども、純真な気持ちがうれしく、何かジーンと心にしみるものがあって、その日は一日中、ホッコリした気持ちで過ごすことができました。

夫婦間の意思疎通と欲求充足の難しさ

その日は講演の後、数人の希望者の面談をしました。夫婦間の情的なコミュニケーションがうまくできないために、とても悩んでいる方もいました。

意志疎通が難しくて、葛藤と将来への不安を感じている夫婦は少なくありません。

そもそも、男性は妻から感謝され賞賛された時に最高の喜びと生きがい感じ、そんな妻に対しては心から愛情が湧いてきます。一方、女性は夫からの思いやりと愛情を心で実感できた時に最高の喜びと生きがいを感じ、そういう夫に対して心からの感謝や尊敬の念を抱くものです。

ところが、実際の結婚生活では、妻が夫からの愛情を感じられないので、感謝や尊敬ができない。また、夫は妻が感謝や賞賛を全くしてくれないので、妻への愛情が冷めていく…という悲劇の悪循環に陥りやすいのです。結局、夫も妻も欲求は満たされないまま、しかたなく諦めて暮らしている…という実情があります。

目に見えない意志や感情を相手に伝えるのは簡単ではない

さて、相手を喜ばせるために愛情や感謝の気持ちを伝えたいと思っているのに、それがなかなかうまくいかない。…そこには、二つの大きな原因があります。

一つは、私たちの愛情伝達の熱意が足りず、スキルも未熟であるということです。この解決策については、当欄で今まで縷々(るる)お話ししてきましたので割愛します。

今回は、もう一つの原因と、その対応策についてお話ししたいと思います。

その原因とは、「地上生活では心の思いが相手に伝わりにくい」ということです。

霊能力者や霊界研究者によると、霊的世界では直接に霊魂対霊魂の対話になるので、自分の意志が、即、100%相手に伝わる世界だと言われています。

しかし、地上生活では肉身対肉身で対応する生活です。私に意志や感情があっても、それを相手に伝えるには、肉身の脳で体を動かして、言葉にして口で語ったり、文字で書いて伝えたり、表情や態度や行動で相手に発信します。

相手はそれを受信装置としての耳や目でキャッチし、脳で整理して心で感知するという経路をたどります。その場合、媒介する肉身機能の性能には限界があり、媒体としての言語にも限界があります。

したがって、高度で繊細な人間の意志や感情の100%をすべて相手に伝達することには困難があります。媒介による翻訳ミスや伝達ロスがあるからです。

心で心に語り掛け、魂と魂で語り合おう

この点を考慮すると、もう一つのコミュニケーションの秘訣が分かってきます。

つまり、「この世では思いが伝わりにくいものなのだ」ということをよく認識したうえで、話すときには言葉をよく選び、表情やしぐさを駆使して表現し、相手の顔の奥にある霊魂に対して語り掛けるような気持ちで話をしてみましょう。

そして、相手の話を聞くときには、霊性の耳を研ぎ澄まし、言葉や表情や態度から、相手の心が私に何を伝えたいのかを汲み取るような気持ちで聞きましょう。そうすれば、今までよりもはるかに深く相手の思いを感知できるようになります。

自分の心の中にもあるように、相手の心の中にも、想像以上の寂しさや悲しみ、痛みや苦しみ、困惑や葛藤があり、また、期待や願望、感謝や喜び、夢や構想、希望や計画などがあるのです。

それらを知り合ってこそ、夫婦の完全一体化に光が見えてくるのだと思います。