新米ママのありのまま(13)local_offer新米ママ
フリーライター 岸元実春
子供の「キライ」は「スキ」の裏返し?
「ママ、好き?」
「スキ!」
「パパは?」
「キライ!」
ほぼ毎日のように繰り返される娘との会話です。パパは毎回ショックを受けながらも、娘のいたずらっぽい笑みにほだされています。パパがショックを受けたような変顔をするのがおもしろいようで、「キライ」を連発してからかって遊んでいます。
しかし、本当に「キライ」になることも。大人がスマホを触っているとすかさず手を出してきて、指紋認証の上に指を乗せてロック解除をせがみます。それに負けてしまう甘いパパ。長くても10分以上は触らせないようにしているため、取り上げると怒って大泣きしてしまいます。そして必ずこう言ってママの所に走ってくるのです。
「パパ、キライ!」
娘は大泣きして抱き着いてくるのですが、笑わずにはいられません。
なんと最近では、あんなにスキだったじいじまで「キライ」の対象になっているのです。その原因は同じくスマホ。親がスマホを渡さないようにしていたら、今度はじいじとばあばのスマホを狙い始めました。動画サイトや、自分が映っている写真や映像を見たがるのですが、「少しだけね」、「あとこの動画だけ見たら返してね」とじいじとばあばが約束をさせます。きちんと約束を守ることもあれば、守らないことも。「もう時間だからね」とスマホをじいじが取り上げるとあの言葉が飛び出します。
「じいじ、キライ!」
パパ以上にショックを受けるじいじ。「じいじ、好きでしょ」と聞いても、泣きながら「キライ!」の連発。そんなことがほぼ毎晩繰り返されていく内に、「じいじ、キライ」が定着するという悲惨な事態に。
「ママ、好き?」
「スキ!」
「パパ、好き?」
「スキ!」
「ばあば、好き?」
「スキ!」
「じいじ、好き?」
「キライー!」
パパと同様ショックを受けるじいじをおもしろがってか、笑顔で答えるようになってしまいました。
「キライ」と言いつつもじいじが仕事から帰ってくれば「じいじ、帰ってきたねー」と喜んで玄関までお出迎え。寝る前は必ずじいじの傍に行って遊んでほしいアピールをする程、言葉とは裏腹に「スキ」が行動に表れています。「キライ」と笑顔で言えるのは、じいじは自分を嫌いにならないと確信しているから。可愛がってもらっているからこそ「キライ」と言えるのでしょう。
ちなみに、ママに「キライ」と言うことはほとんどなく、いくら叱っても抱き着いてきて嫌わないでと全身で訴えてきます。仕事で娘を義母に預ける時には、出かける前は必ず大泣き。それも泣くのを堪こらえるような顔をして寂しさを訴えてくるものだからこちらまで泣きそうになります。切実に求められることに幸せを感じながらも、いずれ大人になっていく事を考えると切なくもあり、今この時にめいっぱい愛したい、そう思わされます。