新米ママのありのまま(14)local_offer新米ママ
フリーライター 岸元実春
情の深さは天宙一? 娘から学ぶ「友達」を慕う純粋な情
力強いセミの鳴き声が遠のき、徐々に小さくなっていく夕暮れ時のヒグラシの声。蒸し暑さが和らいできた夜には、風鈴を思わせるような涼しくて心地良い虫の演奏が耳に届きます。
「何か聞こえるねえ」
まだ何の声か分からない娘は、耳に手を当てて窓の外を見つめます。涼やかな音色の向こうから、近所の子供の声が聞こえると、もっと窓に顔を近づけて嬉しそうな表情をします。
「お友達?」
少し離れた所に同年代の友達がいるので、子供の声が聞こえると友達が来たのではと期待して、毎回聞いてきます。自分の名前よりも友達の名前の方が先に言えるようになった程、友達のことが大好きな娘。友達の名前を何度も言って、一緒に遊んだ時のことを思い出しては話してくれます。
今年の初め頃から8月まで、お隣の貸家に同年代の友達が住んでいました。近くに家を建てていたため、その間の仮住まいとして越してきたご家族でした。とても社交的なご家族で、家族ぐるみでお付き合いができ、娘は自分の家のように友達の家に上がり込んでよく遊んでいました。娘だけでなく私にもママ友ができ、子育ての情報共有や、夫の家族との同居仲間として色々お話しでき、素敵な縁を結ばせてもらいました。
隣同士だったので、娘が家の中から友達の名前を大声で呼ぶと、向こうの家の網戸が開いて、友達とお母さんが顔を覗かせてくれていました。家の外に出ると必ず友達の家の前に行って、友達の名前を呼んで一緒に遊んでいました。こんなに近くに気の合う友達ができたことを親としても喜んでいたのですが、隣同士でいられるのは限られた期間のみ。とうとう引っ越しの日、子供達はよく分かっておらず、親の方が泣きたくなる程寂しくなってしまいました。
いつもは開いていた雨戸がずっと閉めっ放しになっているのを見て、「お出かけしてるの?」と聞いてくる娘。あそこにはもう友達は住んでいないと教えてもよく分かっていない様子で、たまに大声で友達の名前を呼ぶ姿が切ないです。友達の方も娘のことを気にかけてくれているようで、寝る前に隣の家を見ながら娘の名前を呼んで「寝てるの?」とママに聞いているそうです。その話を聞くと余計に切なくなって泣けてきました。
とはいえ、車で5分もかからない近場なので、会おうと思えばいつでも会える距離。互いの家を行き来したり、公園に遊びに行ったり、これからもずっと友達でいてほしいなと願っています。
大人になるにつれて疎遠になっていく友達が増えたり、友達と深く付き合う方法を忘れていっている気がします。友達と遊ぶのが楽しい、別れがたい程好きという、娘の友達を慕う純粋な情に感心させられます。子育てを通して、娘から学ばされる事、自分の成長に繋がる事が多くあるのを日々実感しています。