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ジャーナリスト 堀本和博
今年も〈ノーベル賞週間〉で終わらず〈ノーベル賞月間〉が続く期待が膨らむ
別名・神無月(かんなづき)の10月は、稲の収穫を祝う秋祭りの祭り囃子が聞こえてくる〝神を祭る月〟である。万花の王花・菊の大輪が開き、柿や栗が実り、食べ物も豊富な実りの秋本番を迎える。澄んだ空の下ではハイキング、釣りやスポーツを楽しみ、夜は夜で読書も楽しめる、1年でもっとも過ごしやすい季節である。
それに最近はもうひとつ、大きな楽しみが加わった。
さて、今年は誰に栄誉がいくのかな!? 今月上旬は、人類のためになった発明や発見に与えられる最高の栄誉ノーベル賞受賞者が発表される〈ノーベル賞週間〉だ。昨年のがん免疫治療の地平を開いた本庶佑氏に続いて、日本人の誰かが連続受賞となれば、授賞式の12月まで日本中が沸いて祝賀ムードが続く。そうなると、週間から10月も11月も〈ノーベル賞月間〉となるのだ。
昨年までの日本人の受賞は27人。このうち自然科学3賞では物理学が11人、化学7人、生理学・医学5人の計23人は米・英・ドイツなどに続く世界第5位である。生理学・医学賞は3賞の中で一番少ないが、15年の大村智氏からは17年を除いて本庶氏まで日本人の受賞が相次いでいる。しかも、これからの受賞候補者でも目白押しである。
そこで今回は今年、栄誉を受けるかもしれない生理学・医学賞の受賞候補者について見ていきたい。
2012年に受賞した京都大学の山中伸弥教授は16年のNHK特集で「日本人はこの分野でいつノーベル賞をもらってもおかしくない業績はたくさんある」として、いくつかの候補を選んでいる。
その筆頭に挙げた本庶氏は昨年受賞。次に挙げたのが生命の設計図を書き換える、というゲノム編集の技術で「これがもらわなかったら、ちょっと僕びっくりする」と言うのだ。この端緒となる発見をした大阪大学の中田篤男名誉教授と九州大学の石野良純教授を挙げる。そして、もうひとり挙げたのが、動脈硬化を引き起こす血液中のコレステロールを抑える薬として世界中で1日に4千万人が使うという薬「スタチン」を発見した東京農工大の遠藤章特別栄誉教授である。このほか免疫分野で京都大学の森和俊教授、大阪大学の坂口志文特任教授、熊本大学の満屋裕明名誉教授も下馬評に挙がっている。
今年も〈ノーベル賞月間〉となり祝い囃子が聞こえてくる期待が膨らむのである。