春夏秋冬つれづれノートlocal_offerつれづれノート
ジャーナリスト 堀本和博
すいか割りの不揃いな塊(かたまり)にかぶりついた子供のときのおいしい思い出を蘇らせて
梅雨明けのあと大暑(今年は先月22日~立秋7日の期間)とともに一気にやってくる夏本番の暑さである。今年の8月は熱中症に加えて中国・武漢発生の新型コロナウイルス禍への十分な警戒感を持って過ごしたい。早めの水分(塩分を含む)補給、エアコンによる室温28度以下にする心がけとともに、いわゆる三密(密閉、密集、密接)を避け、マスク、手洗い、うがいの励行である。
さて、今夏が記録的猛暑・酷暑となるかどうかは分からないが、近年は五輪マラソンレース地も札幌へ追いやるほど尋常でない暑さが続いている。一昨年の夏は気象庁が「災害と認識して」と警鐘を鳴らすほどの異常気温だった。日本の観測史上で最高気温は7年前の猛暑で記録した高知・四万十市の41.0度だったが、一昨年は7月に埼玉・熊谷市が41.1度で記録破り。また東日本の7月の平均気温は平年を2.8度も上回り、昭和21(1946)年の統計開始以降で最高となった。
一方で、今年の梅雨期間中(7月上旬)の九州豪雨では熊本県などで70人以上の死者・不明者を出す惨事となった。3年前の九州北部豪雨でも大災害となり、平成最後の夏となった一昨年も西日本(岡山など)では死者・不明者200人以上の広域豪雨災害となったのである。
梅雨のイメージを変える「数十年に一度」という豪雨が毎年のように続くことといい、今までの常識を破る「災害と認識」(気象庁)すべき暑さといい、温帯湿潤気候とされる日本の「夏」景色は、どうやらこれから一変しそうである。
話は当時も地球温暖期だったとされる平安時代にワープして、清少納言は暑い夏をどう過ごしたのか。枕草子には「いみじう暑き昼中に、氷水に手をひたし、もてさわぐ」とある。氷水に手をつけたり、持ったりしてはしゃいでいたというのだ。冬に貯蔵した氷が使えたのは限られた貴族だけだろうから優雅な話ではある。
令和の今は誰でもクーラーの恩恵にあずかれる。望めばアイスクリームもかき氷も甘く冷たいスイーツもほとんど意のまま。前号で触れた「すいかの日」は7月27日だが、すいかの季語は夏ではなくて秋。一番の旬が立秋過ぎの8月半ばだからだが、夏といえばやはりすいかだ。砂浜ですいか割りの不揃いな塊(かたまり)にかぶりついた子供のときのおいしい思い出を蘇らすだけでも涼しさが漂ってくる。そんな楽しい消夏法もある。