機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(29)

福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(29)local_offer

みなが納得のいく在宅介護を

Q 退院してくる高齢の親を自宅で介護したいのですが、家族だけでは不安です。家に看護師さんが来てくれると聞いたのですが……、どうしたら良いですか?

「病気や障害があっても住み慣れた家で暮らしたい」、「人生の最期は自宅で迎えたい」と希望される方は多くいます。一方で、介護する側の家族からは「叶えてあげたいけれど、ずっと付き添うのは難しい」、「医療的な介護はできない」、「急に状態が悪くなったら、どうしたらいいかわからない」など、自宅で介護することへの不安や葛藤の声がたくさん聞かれます。

在宅での療養を支えるサービスには、通所やお泊まり型のサービス、福祉用具のレンタルなどがあります。

また、訪問看護の利用は「医療保険」か「介護保険」のどちらかでの利用になることが一般的です。医療保険からは訪問診療、訪問歯科診療、訪問看護。介護保険からは訪問看護、訪問リハビリ、訪問介護、訪問入浴など、訪問系のサービスがあります。

これらは、健康状態や年齢によって適用される保険や内容が異なります。自分では判断しにくいと思いますので、ケアマネジャーや病院、自治体の相談窓口に連絡して相談しましょう。

訪問看護の内容は、健康状態の観察、医師の指示に基づいた医療的処置、服薬の確認や指導、医療機器の管理、食事や排泄などの介助や指導、褥瘡(床ずれ)処置・予防のための助言、関節拘縮予防や身体・生活機能回復の訓練、認知症介護の相談、家族の精神的支援、ターミナルケアなど、様々です。また、主治医に直接聞きにくい疑問に答えてくれるなど気軽に相談にのってくれます。24時間対応の訪問看護の事業所もあり、緊急な際も医師と連絡を取り、必要なケア処置をしてくれます。

訪問リハビリは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といった専門家が自宅を訪問し実施してくれます。高齢者のリハビリは、日常生活の自立と質の向上を目指し、生きがいを支援することが目的になっています。

具体的には身体機能の改善、物理療法などでの痛みの緩和、摂食嚥下機能の改善、日常生活動作の指導、福祉用具の利用や住宅改修などの相談、生きがいや趣味、社会参加促進のための助言や、ご家族への助言などを行っています。

訪問看護も訪問リハビリも、利用にあたっては主治医から指示書を書いていただく必要があります。介護保険では他のサービスとの併用もあるので、担当ケアマネジャーに相談し、主治医との連絡や必要な介護計画を立ててもらうようにしましょう。

在宅介護の主役は、ご本人とご家族です。これまでの人生で築いてきた価値観や絆は、サービス提供者の知識や経験よりも、ずっと重く尊重されるものです。何を優先させるかをご家族で話し合い、決められないことや迷った時にはケアマネジャーやスタッフに遠慮なく相談して下さい。

介護系従事者や医療系従事者のサポートを受けながら、ご本人とご家族が、安心して納得のいく在宅生活を送れるとよいでしょう。


本欄は、TLSC(True Life Support Center:トゥルーライフ・サポートセンター)のメンバーが交替で執筆しています。
TLSCは、医療・福祉職の有志が、人類一家族理想の実現をめざし、それぞれの専門分野の視点から研鑽し合い、運営しています。