福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(46)local_offer福祉のこころ
社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人
家庭的社会福祉論(上)
社会福祉の対象とは
これまで障がい者福祉について述べてきました。これに、高齢者、児童の分野を併せ、社会福祉の伝統的3分野と呼びます。近年ではこれらに加えてホームレス等の生活困窮者、引き籠りやニートなどの生きづらさを抱える人への支援など、社会福祉の対象者は拡大しています。
家庭的社会福祉論とは
そこで改めて、社会福祉とは何か、を考える必要性が生じていると思います。全体像を捉えて、福祉の概念をしっかりさせるためです。それは同時に、本誌の発行元であるAPTFが推進する「真の家庭運動」における福祉とは何か、を考える作業になるのかも知れません。
結論から言えば、真の家庭運動とは家庭を中心に様々な社会問題を解消しようという運動ですから(私見です)、社会福祉も家庭を中心に考えることになります。この社会福祉を「家庭的社会福祉」と名付けることが出来るものと思います。
家庭的機能の延長としての社会福祉
もともとは家庭内で行われていた福祉が、時代が進展するにつれ、社会的に行われるようになったものが社会福祉であるという考え方です。この考え方は、実際の社会福祉の歴史でもありました。
産業革命以前(いわゆる農業社会時代)、福祉は家族、頑張って広げても、近隣の人々によって行われていました。これが工業社会になると、家族機能が縮小する現象が生じ、そのかわりに社会が福祉を行う(いわゆる福祉国家)ようになりました。
家族による福祉への否定的雰囲気
しかしながら今日において、福祉を家族と結びつける考え方はあまり支持されないかもしれません。かつて、福祉は家族の問題だとして、過剰な負担を家族に背負わせてきた歴史があるからです。したがって、家庭的社会福祉と言う場合、社会的資源(様々なサポート制度)を十分に活用する前提であることを予め強調しておきたいと思います。
マードックの家族機能説
それでは、社会福祉にまで繋がる家族の機能とは何だったのでしょうか。家族社会学においてはアメリカの人類学者マードックの家族四機能説(1949年『社会構造』後述)が有名です。機能とは、社会における家族の役割のようなものです。マードックは核家族論でも有名ですが、同時に批判も多い学者です。しかし、アメリカが性倫理的に健全な時代(第二次世界大戦直後)の学者として、筆者は有用な理論を提供したと評価しています。
本稿ではマードックの4機能説に2つの機能を加え6機能説としたいと思いますが、そのため名称を、家族機能ではなく、家庭的機能とします。次回から、筆者の考える6機能説について説明し、それと社会福祉との関係を述べたいと思います。