福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から(47)local_offer福祉のこころ
社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人
家庭的社会福祉論(中)
家庭の6機能とは
家庭が持つ六つの機能とは、①性的機能、②経済的機能、③生殖機能、④養育機能の四つ(これがマードックの4機能)に、⑤老親扶養機能、⑥価値の継承機能│を加える筆者の考え方です。ひとつずつ紹介します。
性的機能
性的機能とは妙な名称だと思うかもしれません。マードックは、夫婦のみが社会的に性関係を持つことが許される男女の関係であるとしました。結婚前や夫婦以外の性関係は社会的に許容されないという意味において、家族には性的機能があるというわけです。
マードックは世界の家族を調査してこう主張しているのですが、今日では、ナンセンスと言われるかもしれません。しかし性倫理として堅持しておくべき項目でしょう。
マードックは家族の機能を書いた『社会構造』(1949年)において、男性の性欲をコントロールできなかった文化は、その社会を維持できなかったとの興味深い見解も述べています。現代社会は、様々な性的な逸脱行動が増加しています。このままでは、持続可能な社会ではなくなるかもしれません。
経済的機能
家庭は、夫婦が協力して収入を得て、安定して生活できる基本的単位です。独居(一人暮らし)ではすべての責任がひとりにかかります。しかし家庭では、それを夫婦で分担できます。助け合う関係が築かれていれば、社会において最も安定した生活を行える単位であるといえます。
重要なことは、負担が偏ってはいけないということです。家庭を成立させる3要素、「稼得(収入)・家事・育児」を夫婦で相談して分担し合いましょう。そのパターンは合意さえあれば、いかようでも構いません。主婦でも主夫でも、もちろんフィフティ・フィフティでも大丈夫ですが、とにかく分担し合いましょう。
生殖機能
社会を順調に維持していくためには、子どもが生まれ育って働くようになり、税金を政府に収めてもらわなければなりません。政府は税収を国民に再配分します。その重要な子どもが生まれる環境は、家庭が一番いいというのが生殖機能の意味です。いわゆる嫡出子のほうがいいとの考え方です。
家族の枠外で生まれた子どもを非嫡出子と呼びます。現在、法的には、嫡出子との差別がなくなりましたが、子どもが育つ精神的環境においては依然として差があると考えられます。非嫡出子は母子家庭として育つことが多く、生育環境には困難が生じがちです。
発達論的に考えて、両親である方が子どもの成長はスムーズです(不仲でない前提)。親が育てることが出来ず、児童養護施設(かつての孤児院)や里親に引き取られる子どもたちは、情緒の一番根本のところを形づくる愛着形成において、多くの苦労を強いられることがそのことを物語っています。(社会学修士・宗教教育学修士)