福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (30)local_offer福祉のこころ
自分のための高齢者施設の選び方
Q 最近は自分たちの老後のことを考えるようになりました。将来は施設入所も考えているのですが、金銭面なども不安です。子供も独立し、親も見送り、介護の楽しさ、大変さを経験しました。どのように施設選びをしたらよいでしょうか?
A
介護の末に親御さんを見送られたとのこと、介護に関わった期間にはいろいろ大変なこともあったと思います。介護経験者のなかには、「子供には同じ苦労はさせたくない」と言われるかたもいます。二世代、三世代で同居し、家族で支え合いながら最期まで自宅で過ごすことができればいいのですが、様々な事情から簡単なことではなくなってきています。
さて、老後の住まいとしては、自宅と施設、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらが良いのかの正解はありません。しかし、施設に入所する場合は、「家族に迷惑をかけたくない」という理由だけで施設を選ぶのではなく、何を優先させて選択するかが大切であると思います。
まず、施設とはどういうところか、種類やサービスの内容を知っておきましょう。
高齢者施設は大きく分けて、「公共型」と「民間型」に分かれます。
公共型には、介護保険施設とケアハウスがあります。費用は安いのですが、入所希望者が多く、待機期間が必要です。数年間待機することも珍しくありません。介護保険施設には、自宅介護が困難な介護度の高い方が優先される「特別養護老人施設」、在宅復帰を目指すリハビリ重視の「介護老人保健施設」、医療処置の必要な方が入所する「介護医療院」があります。
民間型には、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、シニア向け分譲マンションなどがあります。費用は公共型に比べて高くなりますが、サービス内容は比較的充実しています。また地域密着型支援の「小規模多機能型施設」や「グループホーム」などの施設もあります。なかなか覚えづらい名称ですね。
以上のように、施設の種類は多様で、費用や入居要件も異なります。近隣にどのような施設があるのか、関心を持って調べておくのもいいでしょう。施設を終(つい)の棲家と考えるなら、体力や判断力のある元気なうちに施設探しを始めるのもいいと思われます。
見学したり、体験入居したりすることもできますし、契約などもある程度の期間を要し、それなりの経済的な見通しや身元保証人(家族等)の同意が必要です。
自宅で最期まで過ごしたいという希望があれば、介護サービスの組み合わせを検討することで大概は自宅で過ごすことは可能ですが、その場合はやはり家族の支援が大切です。
「終活」や「人生会議」という言葉を耳にすることがあると思います。日頃から、老後の生活をどのように暮らしたいのか、費用面だけでなく、自分の望む生活スタイルや家族関係など、考慮すべきことが多いので、家族等に気軽に気持ちを伝える機会を持てるといいと思います。
誰でも幸せ感あふれる老年期を過ごせることが願いですから。
本欄は、TLSC(True Life Support Center:トゥルーライフ・サポートセンター)のメンバーが交替で執筆しています。
TLSCは、医療・福祉職の有志が、人類一家族理想の実現をめざし、それぞれの専門分野の視点から研鑽し合い、運営しています。