福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (35)local_offer福祉のこころ
ケアマネジャー(介護支援専門員) 増田佳美
自宅で自立して暮らす高齢者への介護保険以外の福祉サービスについて
現在、日本は4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎えています。少子化の進行と共に、家族の世帯状況や地域社会の機能も大きく変化してきており、高齢者の介護や福祉のあり方が課題になってきています。
高齢になっても健康で自立した生活を続けていければいいのですが、健康面や経済面で不安を抱えながら暮らしている高齢者は多く、家族や周囲からの配慮や支援が必要になってきます。
高齢者に対する具体的な支援は、平成12年に導入された介護保険制度の下で実施されており、高齢期の生活を支えるための、なくてはならないサービスとなっています。
介護保険制度の他にも社会福祉協議会による「日常生活自立支援事業」、そして「成年後見制度」など、様々な法律や制度によって高齢者の安心な生活を支えています。また「高齢者虐待防止法」によって高齢者虐待の防止や早期発見に向けて取り組みが進められています。
「日常生活自立支援事業」とは、認知症などにより判断能力が十分でない方が、住み慣れた地域で安心して自立した生活を送れるように、必要な福祉サービスに関する相談や援助を実施する制度で、本人との契約が前提です。さらに判断能力が低下してきた場合には成年後見制度への移行が求められます。
「成年後見制度」とは、認知症や知的障がい、精神障がい等の理由で判断能力が不十分な方が、預貯金の管理や日常生活での様々な契約などを行う時に、不利益を被ったりしないように、本人の意思を尊重し、権利と財産を守り支援する制度です。法定後見と任意後見という二つに大別されますが、法定後見は利用する人の判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助の三つの制度に分けられます。
また、各自治体には独自の「高齢者福祉サービス」があります。例として、配食サービス、紙おむつの支給、寝具類クリーニング費用助成、緊急通報装置設置費用補助、新聞配達店等による見守り声掛けなどが提供されています。介護保険を申請しても非該当とされる方に対しても、デイサービスや短期宿泊事業、タクシー料金助成事業、訪問理・美容券の支給等様々なサービスがあるのです。
さらに、高齢者を介護している家族に対しては、家族介護者の交流事業、介護者慰労金支給、はり灸マッサージ治療費の助成などの支援が実施されています。
支援の内容や利用できる要件は自治体によって異なりますが、本人の状態によっては、介護保険などと組み合わせた方が良いケースもあります。自治体の支援を利用したい場合は、本人や家族が市区町村の窓口や地域包括支援センターなどで、受けられる支援について相談してみるとよいでしょう。
わが国の福祉サービスは「申請主義」が基本にあるので、利用するには、自らが利用できる制度を捜し、申請することが必要になってきます。そのため、「困ったかた」が発信できず、「見えない声」が、たくさんあることも現状の課題です。高齢者になっても心豊かな生活を送ることができるよう、必要とする人に必要な支援を届けることに、福祉従事者として努めていきたいと思っています。