機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (38)

福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (38)local_offer

社会福祉士・精神保健福祉士 末吉重人

障がい者福祉について (2)

障がい者福祉の理念

障がい者福祉を行うにあたって、偏見や差別がよくないことは先回述べました。それではどのような理念でこれを行うべきか、障がい者福祉の理念について紹介したいと思います。

ソーシャル・インクルージョン

現在、社会福祉全般では、ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)を目指そうとのことになっています。これを社会福祉の理念と呼ぶことが出来るでしょう。すべての人、障がい者や高齢者、さらに生活困窮者、元受刑者、それに移民等全ての人を社会の一員として迎えよう(包摂しよう)、という意味です。

しかしこの理念は実現途上にあるため、もっと身近な障がい者福祉の理念はと言えば、ノーマライゼーションということになると思います。いずれもカタカナ語ですが、福祉の分野では依然として外来語に依拠したがる傾向が強くあります。

ノーマライゼーション

ノーマライゼーションは少し古い概念です。

1952年デンマークの知的障がい児の親の会が、自分たちの子どもにも普通(ノーマル)の教育を与えて欲しいとの運動を始めました。終戦間もないデンマークではダウン症の子どもらに対し、十分な教育が提供されていませんでした。障がい者福祉は当事者やその家族らによって始まるという歴史的教訓でもあります。

やがてこの運動に共鳴したバンク・ミケルセン(後の厚生大臣)が1959年に知的障害者法を制定し、そのなかでノーマライゼーションを、「障がいのある人が、ない人と同じような生活が出来るよう保障すること」(筆者意訳)と定義しました。

その後、ノーマライゼーションは世界に紹介されるようになり、その実現のために住環境のバリアフリー化が必要であること、障がい者への偏見の除去が必要であることが付け加えられるようになりました。

障がいのある人が、ない人と同じように生活できる、これが障がい者福祉の理念であり、目標でもあるということです。訳せば「普通化」のようになりますが、訳さずに英語のまま使用します。

障がいの三分類

我が国においては、法律の制定上、障がいを三分類しています。それらは身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者です。それぞれに対応する法律があります。発達障がい者には別途の法律がありますが、分類上は精神障がいに属します。次回からそれぞれの特徴を紹介します。