福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (23)local_offer福祉のこころ
「介護予防・日常生活支援総合事業」について
Q 要介護にならないための仕組みはありますか?
A
多くの人は、自分の老後を考えたとき、誰かに介護されることなく、住み慣れた所で、いつまでも元気に自立して過ごしたい、と言います。
さて、要介護状態になる原因は、重篤な疾病によるよりも、①加齢による衰弱②運動能力の低下による転倒・骨折等による身体機能、生活機能の低下③高齢による認知症の発症、生活意欲の低下、などが多いです。
例えば、定年退職後など、社会との関わりが急激に減少し、生きがいを失って閉じこもるようになり、活動量の低下や緊張感がなくなることから認知症にもなりやすくなります。
いずれも、毎日の生活を少し変えるだけで要介護の予防になり、状態悪化を防ぐことができるようになります。その重要なポイントは次のとおりです。
- 食生活を見直し栄養面の改善を図る。
- 体操やレクレーション等を通じて運動能力の低下を防ぐ。
- 社会参加の機会を作り、人との会話を増やす。
- 口腔機能の向上を図る。
これらをしっかり行うことで、要介護状態までの期間を遅らせ、また、状態を軽くすることができます。
現在、増加する高齢者人口を見据えて、多種多様な介護施策が導入されています。ここでの「介護予防」もその一つです。
国は、介護予防の目的を、65歳以上の高齢者が「要介護状態になることを未然に防ぎ、できるだけ遅らせること」または、すでに介護が必要な人は、「状態が悪化しないように努め、改善することを図ること」と、うたっています。
これは、各市町村が主体となって地域の実情に応じた独自の判断で内容を決定し実施する「地域包括ケアシステム」の事業の一つとして位置づけられ、「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)として2015年に始まりました。
この総合事業には、要介護認定の結果、要支援1、2と判定された方が利用する「介護予防サービス」と、65歳以上で介護認定を受けていない方も利用できる「一般介護予防事業」とがあります。
一般介護予防事業には既存の介護事業者以外にも、住民ボランティアやNPO、民間企業などの参入もあり、地域全体で高齢者の暮らしと健康を支えていく仕組みとなっています。
そのプログラムは、健康セミナー、認知症予防講演会、栄養講座などの教室、気楽に集えるサロンの開設、生きがい作りを目的としたサークル活動、体力づくり教室、絵画、料理教室などの趣味の会の開催など、多種多様です。
各市町村が主体となって行う事業のため、内容や費用、対象などに地域差があります。詳しくは住所地の地域包括支援センターの窓口で聞いてみて下さい。
総合事業は、高齢者が住み慣れた地域で、日常生活を、より充実させて活き活きと暮らし続けられるよう意図して始まりました。
要介護になる前に、長く自分らしい暮らしを続けられるよう、情報を集め、上手に利用してみてはいかがでしょうか。