機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (24)

福祉のこころ 地域医療・包括ケアの現場から (24)local_offer

「介護うつ」について

Q 家族の介護をしていますが、最近、疲れたのか、何もやる気が起きません。どうしたらいいのかも分かりません。

介護は突然に始まることが多く、覚悟や準備のないままに、それまでの生活状況が変わります。そのため、どうしていいか分からず混乱したり、仕事に支障をきたして、介護離職に追い込まれたりすることもあります。

また、介護が長期にわたると、介護者は知らずに疲れも溜まり、自覚のないまま虚無感に襲われたり、不安で何も手につかなくなったりすることもあります。これは誰にも陥る可能性がある症状で、「介護うつ」と呼んでいます。

介護者は、要介護者の排泄や入浴、食事や更衣介助などをする身体的負担と、周囲に理解されないことで生じる疲労や孤独、要介護者の言動に苛立ち怒鳴り返したりして陥る自己嫌悪などの精神的負担が掛かります。認知症介護の場合には、認知症特有の理解できない行動に振り回されて疲れ果ててしまうこともあります。また、介護費用がかかったり、離職によって収入が途絶えたりするなど、経済的な不安もあります。これらの心身の負担や経済的負担が重なり、介護疲れとともに介護うつを引き起こすことになります。

介護うつの症状には、めまい、下痢、便秘、偏頭痛、不眠、過食などがあり、趣味にも興味がなくなり、人と会うのが億劫(おっくう)で外出しなくなったりします。また、イライラしたり、落ち着つかずマイナス思考に陥ったりするなど、精神的な症状もさまざまです。

介護うつは、医療によって治療が可能です。何らかの症状に気づいたら、早めに受診しましょう。

介護うつにならないためには、介護疲れを溜めないことが大切です。介護負担軽減の方法を挙げておきます。

  1. ケアマネジャーが立てる介護サービス計画を活用します。体裁にこだわらず正直な気持ちを伝え、必要ならレスパイトケア(小休止)も利用できます。
  2. 介護保険外のサービスを利用します。配食サービス、外出付き添いや安否確認サービスなどさまざまあります。
  3. 行政サービスを利用します。自治体ごとに独自の支援サービスや、介護費用負担を緩和する制度があります。
  4. 専門的なことを相談できる相手を作りましょう。ケアマネジャーは守秘義務を負った身近な相談相手です。また、かかり付け医や精神科医に相談したり、同じ悩みを抱える家族会に参加したりするのもいいでしょう。
  5. 介護教室を利用し、最低限の介護知識や技術を身につけます。⑥ 介護施設への入所も一つの考えです。施設で介助を受けることで、本人も家族も落ち着く場合があります。

介護うつになりやすい人の特徴として、「自分がやらなければ」と一人で抱え込んで頑張り過ぎてしまうことがあります。頑張り過ぎはストレスのもとです。少し肩の力を抜いて視点を変えると、介護を通して得ることはたくさんあります。

介護ストレスの解消のために、時には介護から離れて息抜きをすることも必要です。誰かに弱音や愚痴を吐き出したり、映画を見て思いっきり泣いたり、大声で歌ったり、好きなものを食べたり、軽く運動をしたりするなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。

介護の場合、「頑張ること=美徳」ではないかもしれません。介護者が倒れるのは、幸せなことではないですよね。独りで背負わず、自分を追い込まず、自分自身をねぎらうことも忘れないで下さい。


本欄は、TLSC(True Life Support Center:トゥルーライフ・サポートセンター)のメンバーが交替で執筆するものです。
TLSCは、医療・福祉の専門家有志が、人類一家族の理想実現を医療・福祉分野の視点から研究し運営しています。