チョッとためになる健康のお話(15)local_offer健康
健康アドバイザー 上杉和彦
「化粧療法」「皮脳同根」の効果
桜が咲き、日も長くなり、暖かい風が吹くと、ウキウキしてきて自然に笑顔になります。
きっと、進学、就職、第2の人生の出発など、新しい門出を迎える方も多いのではないでしょうか。
先月号で、「人間はきれいなもの、清浄なものを見ると気持ちが晴れ、汚れたもの、混乱したものを見ると曇る」と書きました。
皆さんは、毎日鏡を見ると思います。日々自分の顔を見て、嬉しい気持ちになるでしょうか。見れば見るほど、しわが増えた、シミが増えた、肌が荒れてきたなどと言って、暗い気持ちになっていないでしょうか。鏡に向かって、毎日「あなたはきれい、笑顔がかわいい」と言って、口角を上げてみましょう。どんな人でもニッコリした笑顔は美しいものです。
すると脳内からたちどころに幸せホルモンのオキシトシンやセロトニンが分泌され、心がウキウキしてきます。
私も昨年孫が生まれ、その写真を見るとついニッコリしてしまいます。人と話をしている時、私の話に共感して笑顔で聞いてくれると嬉しくなって、話が弾みます。しかし、険しい顔で頷くこともなく、聞いてくれているのかどうかもわからない場合は、早くやめたくなります。
「化粧療法」という療法があります。
以前は明るくてよくしゃべっていた82歳の女性が、アルツハイマー型認知症になって、徘徊するようになりました。笑顔が消え、しゃべらなくなりました。その女性に化粧をして、「きれいになりましたね」と鏡を見せると笑顔になりました。最初は化粧をしてもらうのですが、段々と気持ちが前向きになってきて、自分で化粧をし、おしゃれも楽しむようになりました。すると、以前のように、笑顔が増え、おしゃべりもするようになり、認知症の症状が改善されてきました。
薬を処方したわけでも、何時間もカウンセリングを受けたわけでもありません。「きれいなもの、清浄なものを見ると心が晴れる」という、人間が何歳になっても持っている欲求を刺激したからです。
またもう一つ要因があります。
「皮脳同根」という言葉があります。皮膚と脳は同じ細胞から出来ているという意味です。人間の受精卵が細胞分裂を始めると、まず最初に「内胚葉」「中胚葉」「外胚葉」の3層に分かれます。内胚葉から内臓が作られ、中胚葉から骨と筋肉が作られ、外胚葉から脳と神経と皮膚が作られます。ですから、皮膚に触れるということは脳に触れることと一緒なのです。昏睡状態に陥った人であっても、手を握ったり、手をさすって声をかけてあげると、脳に刺激が伝わっていくと言われています。
握手、ハイタッチ、ハグなど、皮膚に触れることを通して、脳に信号が伝わり、親近感が湧いてきます。手もみ、足もみ、肩もみは、時には言葉以上に相手の心に気持ちが伝わります。大事な家族に、ぜひお試しください。