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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(23)

チョッとためになる健康のお話(23)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

「8020達成」のために

今年も残すところあと1か月となりました。寒くなってくると温かいものが恋しくなり、コンビニで売っているおでんや、肉まん、あんまんが食べたくなりますね。高校生の頃、部活帰りでお腹が空くので、よく熱々のあんまんを買って、食べながら帰りました。

ところで、「8020運動」というのはご存知でしょうか。1989年(平成元年)に当時の厚生省が提唱した国民運動です。平均寿命も延び、「人生100年時代」と言われるようになりました。そこで「健康寿命を延ばすため、80代で自分の歯を20本残しましょう」と提言したのです。人間の歯は、平均すると上下で24本あるので、入れ歯を4本ぐらいに留めましょうということになります。私も左下の奥歯2本を入れ歯にしてみて感じるのは、硬いものが噛みにくくなったことです。80歳までの15年、少なくとも入れ歯はあと2本に留められれば、8020運動の合格者になれます。

私の子供たちは歯列矯正に100万円ぐらいお金を投下しています。芸能人のように、白くて歯並びの良い歯にしたいと思っているのでしょうが、長い目で見ると、健康にはとても良いことだと思います。この運動が始まった1990年代は、1割しか達成者がいませんでしたが、今では5割を超えるぐらいまでになり、歯科衛生に対する国民の意識が年々高まっていることがわかります。

私の父親は総入れ歯でした。昔は平均寿命も短く、60歳の還暦を元気で迎えるのは、おめでたいことでした。「自分の歯が20本あれば、噛むのに不自由しない」ということなのですが、それ以上抜けてしまうと、やがて総入れ歯となってしまいます。昔、総入れ歯のお年寄りはそれほど珍しくはありませんでした。面白いことに、入れ歯の歴史は日本が最も古く、500年ほど前から作られていました。つげの木で、とても精巧にできていたそうです。作っていたのはなんと「仏師」でした。手先の器用な仏師だからこそ、その人にピッタリの入れ歯を作ることができたのでしょう。ちなみにヨーロッパの最古の入れ歯は300年前で、日本より200年も遅れていました。日本のもの作りのDNAはすごいですね。

ところで、抜歯に至る原因は2つあります。一つは虫歯、もう一つは歯周病です。虫歯は痛みが伴うので必ず治療し、対処しますが、歯周病はあまり痛みがないし、歯ぐきから血が出て口臭がひどくなっても自分では気がつきません。その内、歯がぐらぐらして抜けてしまいます。歯周病を防ぐためには、原因となる歯垢を取り除くことと、歯ぐきの血行を良くすることです。一番簡単な方法は、定期的に歯医者に行ってクリーニングをしてもらい、虫歯の有無を確認することです。費用は掛かりますが、「8020達成」の確率は高くなります。

歯ぐきの血行が悪くなるもう一つの原因は、糖尿病です。血糖値が高いと毛細血管が詰まりやすくなり、炎症が起こります。腎機能が落ちて人工透析になったり、視力が落ちたり、脳梗塞になるのも血行不良が原因です。また、歯周病菌が原因で、心筋梗塞やがん、誤嚥性肺炎、早産になる確率が高まるとも言われています。最近、電動歯ブラシを使うようになりました。歯垢の除去と歯ぐきのマッサージにはとても効果的です。お試しください。