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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(1)

チョッとためになる健康のお話(1)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

日本人の天敵がん

コロナパンデミックが始まって4年目に入りました。今は第8波の只中にあり、全国でたくさんの感染者が発生していますが、春ごろには感染症法2類から5類、いわゆる季節性インフルエンザと同じ対応に移行すると言われています。当初は獲得免疫が出来て、早晩落ち着くだろうと見ていましたが、次から次へとコロナウイルスが変異して、感染が収まりませんでした。しかし、変異すればするほど、毒性が弱まるため、一番恐ろしい致死率も、発生当時10%あったのが、今では0.01%に減り、インフルエンザよりも低くなっています。

そこで気づかされたのは、ウイルスは変異することと、ウイルスに対抗するため作られる免疫は長くもたないということでした。風邪を治す薬を作れたらノーベル賞がもらえると言われていますが、8割以上はウイルスが原因で、その種類も200以上あるそうですから、とても太刀打ちできません。そう言えばインフルエンザもウイルスですね。

ところで、日本人の年代別死亡原因の1位を調べてみると、10歳以下は先天性奇形とがん、10代、20代、30代は自殺、40代以上はすべてがんです。今や2人に1人ががんにかかる時代と言われています。戦後間もない頃は、結核と脳疾患が1位。医療が進歩し、国民が豊かになっていくと、それらは減少しますが、代わりに増えてきたのががんと心疾患です。若い時は免疫が高いので、1日3000個発生すると言われているがん細胞を、免疫細胞が殺してくれます。しかし、30代に入ると、運動不足や食べ過ぎ飲み過ぎ、ストレスがたたってお腹が出始め、いわゆる中年太りが始まります。糖尿病も増えてきます。そういえば、戦後間もない頃、糖尿病はほぼ0でした。今は40歳以上の4人に1人が糖尿病です。

恐ろしいがん細胞も、発生する部位によって名前が変わりますが、ウイルスと同じように変異します。彼らも生き延びるために必死なのです。抗がん剤や放射線によって傷めつけられ、それでもしぶとく生き延びたがん細胞は変異し、薬に対する抵抗性を高めます。初期がんを治療して寛解しても、何年か後に再発するがんは、増殖力が強く、転移するスピードも速くなっています。

がん細胞は、ウイルスと違って外から入ってくるわけではありません。自分の細胞が勝手に増殖を始めたものががん細胞です。人の体には60兆個、或いは37兆個の細胞があると言われています。そして、それぞれの細胞に寿命があり、短いものでは胃腸の上皮細胞の24時間から、心筋や脳のように一生現役のものまで様々です。寿命が来た細胞は死に、新たな細胞が生まれて入れ替わります。これを新陳代謝と言います。ところが、ストレスや添加物、農薬、薬品、酸化や糖化で変質した物質などによって発生した活性酸素が、細胞の中のDNAを傷つけて、寿命という設計図を壊してしまいます。いつまでも増殖を続け、本来の臓器の働きを邪魔するようになるのです。本当は良い子なのに、悪い環境から影響を受けて不良少年になったようなものです。

日本人の天敵と言ってもよいがんですが、今も増え続けています。中国も増えていますが、実はアメリカは減り始めました。この続きは次号にて。

※統計の出典は「厚生労働省令和3年人口動態統計」