機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(23)

人生を豊かにする金言名句(23)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

馬上(ばじょう) 、枕上 (ちんじょう)、厠上(しじょう)

良いアイデアが浮かぶ場所――馬の上、枕の上(寝室)、トイレの3つです。たぶん小学校で習ったか、あるいは教師の余談だったかだと思います。「3つの上だ」と言って紹介されたのを覚えています。「三上(さんじょう)」と言います。

その話を聞いて以降、トイレ(当時は便所と言っていました)にいる時、何か気付きがあると、”あ、これか”と思うものでした。ところが、子供の頃はすぐにメモをするでもなく、後で思い返すことがほとんどできないで、”えーっと、何だったかなあ”となり、結局、気付きがあったことも忘れる始末でした。

睡眠は大切です。精神的な興奮状態、悩み事がある状態などでは寝付けなくなったりします。こういう経験は意外とありますね。これとは反対に、枕に頭をのせて”ああ、眠いなあ”と思った途端、「あ、そうだ!」と気付くことがあるものです。そんな時は眠い目をこすりながら起き上がってメモをします。こうするようになったのは、大人になってからですが、ちょっとしんどいです。メモは意外と役に立っています。

最近あるテレビ番組だったか、こんな意味のことを言っていました。「トイレで用を足す時というのは、緊張がほぐれているということです」。何だか、納得してしまいました。精神的な状態とアイデアが出てくることとは関係があるようですね。

科学的な分析は専門家に任せるとして、「三上」を辞書などで調べてみると、大辞典に出ていました。「作文を考えるにつごうのよい三っつの場所」(※原文ママ)(三省堂『辞海 金田一京助編纂』)だと。出典はというと、中国の欧陽修(11世紀宋代の政治家・詩人)がまとめた『帰田録』にあるそうです。

良いひらめきというのは、そこに至るまでに、あれやこれやと考えに考えた末の「天与」なのかもしれません。とはいえ、物忘れを心配する年代になると、場所を問わず、思い出したり気付いたりしたいものです。