機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(35)

人生を豊かにする金言名句(35)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

油断大敵

日常生活、社会生活、いろいろな場面で遭遇する「戒め」ですね。油断するとは「気をゆるすこと」「注意を怠ること」です。

失敗談ですが、「電車の乗り越し」の話です。都内の駅から地方へ向かう最終の特急電車。下車する駅まであと10分余りというところで、ふーっと睡魔に襲われました。油断したつもりはなかったのですが、疲れに負けてしまいました。ハッと気づいたら、かなり走行していました。そして、着いた駅は自宅からは約50キロも先。さて、どうするか。もう深夜です。

駅員に相談すると、”分かっていますよ”という声が聞こえそうな表情で応対してくれました。なんと、マニュアルのようなものがあってビックリ。ということは、たくさんの”乗り越し先輩”がいたわけです。まず24時間営業の健康ランドへ(周辺にホテルがないので)。タクシーで約30分。そこで仮眠を取って、朝一番、徒歩で最寄りの駅まで行き、「特別切符」(JRの好意)を使って電車に乗りました――。上手に準備されたレールに乗ったなあと思いました。

改めて、「油断」とは? 調べてみると、仏教の「涅槃(ねはん)経による」そうです(『辞海』金田一京助編・三省堂・1952年、『旺文社漢和辞典第五版』赤塚忠他編・1993年)。説明によれば、「昔、ある王が家来に油の入った鉢を持たせ、一滴でもこぼしたら生命を断つと言ったという故事」とありました。命がけの話だったとは知りませんでした。

今度はインターネットで検索してみると、「薬師寺」などいくつかのサイトにこの故事が出てきました。諸説あるとしつつ、ブッダのたとえ話であること、大意は教えを学び守り続けるには命がけの真剣さが大切だと分かりました。油ではなく、真理に命を懸けるわけです。

今でも電車に乗ると、乗り越した記憶がよみがえります。”絶対に眠らないぞ!””眠くなったらデッキに立つんだ!”。そんな覚悟をしますが、「油断」の語源と比べてみると、何とも、ささやかな教訓だなあと思います。