人生を豊かにする金言名句(6)local_offer金言名句
ジャーナリスト 岩田 均
天は自ら助くる者を助く
昔の教科書には、こんなことわざが載っていました。原文は英語。日本に紹介されたのは明治のようです。
1916年(大正5年)10月発刊の『改正西国立志編 原名自助論』(サミュエル・マイルズ著/中村正直訳)の原本(漢文)をインターネットで見ることができますが、「第一編(一)自ら助くるの精神」に出てきます(国立国会図書館デジタルコレクション、大阪大学大学院文学研究科・文学部の両サイトを参照)。
最近の訳し方ですと、「他人を当てにせず自らの努力で人生を切りひらこうとする人には、自然に幸福がめぐってくるものだ」(三省堂『故事ことわざ・慣用句辞典 第二版』/2010年刊)と。
英語にある「Heaven(天)」はどこかにいってしまい、「自然と」に置き換えられています。日本の宗教嫌いの風潮を反映しているのでしょうか。ニュアンスがかなり違います。”日本人に理解しやすいようにした”という言い訳が聞こえてきそうです。
私が幼い頃、母からこう諭されたものです。「悪いことをしたら必ず3人は見ているんだよ。天と地と自分の3つ」と。母は宗教に熱心だったわけではありませんでしたから、一般的な感覚として「天」という言葉を使ったのでしょう。私はこの言葉をけっこう意識しました。思い出す場面は小学校の下校途中で、道を歩きながら、空を見上げ、次に地面を見つめ、そして自分がいる、確かにそうだと。他愛もないことですが。
「蟻(あり)の思いも天に届く」はどうでしょう。「どんなに無力で弱い者でも、目的のために一途に念じ努力すれば、必ず道が開けるだろう」(世界日報社刊『つい口ずさみたくなる金言名句』)という意味。身近に感じられる一句です。
似たことわざとして、「人事を尽くして天命を待つ」や「至誠天に通ず」があります。共通するのは、まずは自ら努力をすること。それがあって初めて、自力ではどうにもならない世界からの力を受ける可能性が出てくるということ。