機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」愛の知恵袋 186

愛の知恵袋 186local_offer

家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

立つ鳥、跡を濁さず…終活考(上)基本編

60歳を過ぎたら、”万一の時”の備えもしておこう

先日、あるサークルから「終活セミナーをやってほしい」という依頼があったので、講座のかたちで内的・外的に必要な備えについてお話をさせていただきました。

私も近年、母と父と妻を見送りましたが、親戚や知人たちの訃報も多くなりました。それと共に、「大事な書類が見つからず非常に困った」「意思表明も遺言書もなかったので相続でもめて兄弟関係が気まずくなった」という話や、「親の歩んだ人生路程をもっと詳しく聞いておきたかった」という声もよく耳にしました。

がんや糖尿病なら身辺整理の時間も取れますが、認知症になったり、事故や心臓病や脳卒中で突然他界することもありますから、やはり、体力と気力があるうちに終活をしておいた方が賢明です。内外両面で備えをしておけば、自分も残った人生を存分に過ごせますし、万一の場合も家族や親族に迷惑をかけずに済みます。

そこで今回は老後人生への備え=”終活”の話をしたいと思います。今月は誰にも当てはまる基本的な備え、次号で更に本質的な備えについて触れたいと思います。

エンディングノートの作成と荷物の整理

終活でやるべきことは二つ、エンディングノートの作成と荷物の総整理です。

まずは、人生の総括にもなるエンディングノートを書くことです。そのうえで、空き時間をつくっては自分の荷物を整理するのです。家族に残すべき重要書類・貴重品・記念品をまとめること。そして、生活用品や衣類は絶対に必要な物だけを残して、不要なものを思い切って”断捨離”することです。

ノート作成については、書店の”終活コーナー”に行くと多くの終活本やエンディングノートがありますから、気に入った物を選んで活用することができます。

また、既製品に頼らず自分で作成することも可能です。その際は、以下のような事柄を参考にして、オリジナルのエンディングノートを作ってみてください。

パソコンで書けた順番にプリントしておくのも良いですし、お気に入りのノートを一冊準備して、書ける所から順に書いていっても良いと思います。

(1)私に万一があった時

  • 氏名、生年月日、血液型、住所、電話番号、緊急連絡先
  • 健康保険証・健康手帳・お薬手帳・過去の病歴・服用中の薬・アレルギー
  • 危篤・死亡の時、連絡してほしい人…家族・親戚・友人の氏名と連絡先

(2)私の希望(意志)

  • 介護が必要になった時の希望…(自宅か病院や施設か、家族に判断を委ねるか)
  • 介護費用に何をあてるか…(預金・保険・年金)
  • 重病になった時(病名・余命の告知は?延命治療は?臓器提供・献体は?)
  • 葬儀は…(一般葬か家族葬か、仏式か何宗式か、喪主は?依頼したい業者)
  • 遺影・墓地・埋葬・納骨についての希望
  • ペット、思い入れのある品々…(誰に引き取ってもらいたいか)

(3)私の身辺情報

  • 運転免許証・パスポート・マイナンバーの番号と置き場所
  • 預貯金通帳・各種保険の証券・クレジットカードの情報と置き場所
  • 有価証券や金融商品の一覧、所有不動産の権利書、大切な記念品の置き場所
  • 年金・借入金・ローンの詳細、公共料金・保険料・家賃等の引き落とし口座
  • PC・スマートフォン・タブレットのメールアドレスやロック解除パスワード
  • ネット銀行や証券のアカウント、SNSや有料サービスのアカウント

(4)私の経歴と交友関係

  • 本籍、生い立ち、学歴、職歴、活動歴、趣味、モットー、表彰歴
  • 家族一覧(氏名・続柄・生年月日・電話・住所・勤務先)
  • 親族・友人一覧・住所録(氏名・間柄・電話・住所)
  • 大切な人の命日(年月日)、親族の冠婚葬祭の記録(御祝儀や不祝儀の金額)

(5)大切な人へのメッセージ

  • 家族や世話になった人へ…(感謝の気持ちなど伝えたい言葉を書いておく)
  • 遺言…誰に、何を、どれくらい相続・遺贈したいかをノートに書いてみる。
  • 遺産に関する正式な遺言書は、所定用紙を購入して書いて保管する。
    (2020年7月から自筆証書遺言の保管制度が施行。法務局でも保管してくれる)
    (2024年4月1日から相続登記が義務化。相続者は3年以内に登記・名義変更)

こうして書いてみると、自分が他界した時に、家族が知っていないと困ることがたくさんありますね。元気な時に荷物を整理して貴重品をまとめておくこと、自分の希望や意志を伝えること、書き残しておくことの大切さがよくわかります。

終活に取り組むことは、自分の余生を安心・充実させることにも役立ちますが、何よりも残る家族に対する深い配慮と愛情の証しであることが大切な点です。

「立つ鳥、跡を濁さず」…地上に残すのは、ただ感謝と愛の軌跡のみです。