機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」春夏秋冬つれづれノート

春夏秋冬つれづれノートlocal_offer

ジャーナリスト 堀本和博

七五三参りの明治神宮境内で見た森閑とした荘厳な緑が作り出す自然美の別次元世界

別名神無月の10月が終わり、霜月(しもつき)11月の到来である。二十四節気は立冬が8日、〈木々の葉は落ち、平地にも初雪が舞い始めるころ〉という小雪(しょうせつ)が22日と、冬の訪れを告げる。

だが、近年は明らかに地球温暖化による異常気象続き。海水温度が高くなることで大型化する台風による被害も甚大となり、今年も台風15号に襲われた千葉県などで3週間近い長期停電となり日常生活がマヒした。春夏秋冬四季の気候変化も、猛暑の夏や厳冬の期間が長くなり、春や秋が短くなってきた感じがする。暑さ寒さも彼岸まで、と言うが、今年の暑さは東京でも時期に従い彼岸花が咲いた秋分(9月23日)が過ぎ、10月上旬になっても昼間は真夏日となったのである。

それでも朝晩は涼しくなり、このごろは冷え込みに身を縮めるようになった。11月は近づく冬を前に、山や森や林が色合いの彩りを変化させる。光合成で爽やかな酸素を作ってきた緑葉が、散りゆく前に今度は色づいて楽しませてくれるのだから、感謝の気持ちをこめて愛でたい。

紅(黄)葉を楽しむ季節はこれからだ。その山容を表す季語は、春が「山笑う」、夏の「山滴る」、冬の「山眠る」に対し、一面に燃え上がる紅葉に彩られる秋は「山装う」である。装う自然美の秋色を楽しんだあとは、冬めく自然である。かさこそと落ち葉を踏みしめる音に、土に帰る自然の有り様(よう)を悟り、なおも深まる暖かな秋と忍び寄る初冬の兆しを一緒に実感するのである。

そうした一方で、もう一つの秋を発見するのが羽織・袴姿が凛々(りり)しい男児、晴れ着が可愛い女児が親に手を引かれていく七五三参り。東京・原宿の明治神宮境内で見た森の風景である。青々とした深い緑だけが奏でる森閑とした森の深さ、美しさ。「コン」と頭にどんぐりが当たった。椎や樫、楠(くすのき)など照葉樹木の静かな森は、変わることのない緑の照り葉を輝かせていた。

ここに紅葉の森や林とは違う、もう一つ別次元の荘厳な深緑の自然美があることを見つけたのである。

「うつせみの代々木の里はしづかにて都のほかのここちこそすれ」(明治天皇御製)