機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」春夏秋冬つれづれノート

春夏秋冬つれづれノートlocal_offer

ジャーナリスト 堀本和博

白い花が映える梅雨時、季節が前倒しで進む今年は、どの花がタイミングを合わせられるだろうか

近くの公園と歩道を仕切る生け垣の皐月(さつき)は、5月上旬にもう半数以上が枯れた花びらをさらして、早々に緑葉の季節の到来を告げていた。いつもの年ならツツジが終わって6月になっても、小ぶりな濃いピンクの花が緑葉の中で咲き乱れているのに、である。それほど今年は季節の進み具合が早い。

さて、6月は梅雨の季節である。春夏秋冬に梅雨という雨期を加えて、日本は五季の国だと唱える人がいる。それくらいに、雨つづきの梅雨は人をいやな重い気持ちにさせる一方で、米づくりに欠かせないほか生きものや草木などが自然の旺盛な営みを感じさせ、生命力や生活感にあふれる季節である。

東京の梅雨は、いつもの年なら月前半から7月にかけての40日ほどにわたるが、これも今年は月はじめから前倒しでやってきそうと見立てるが、さてさてどうなるだろうか。

皐月の花のあとの生け垣の周りで目を奪うのは、地面を這うように広がる白十字の星を散らしたように咲く花である。深緑の葉とのコントラストが清楚な純白を一層際立たせて美しく魅せてくれる。

ドクダミ

白い花はその名のために損をしているドクダミであるが、葉は揉んで付けるとおできや火傷に効き、煎じた茶は動脈硬化を予防し便秘にもいいすぐれもの。昔から薬草として重宝されてきたのである。

ドクダミは花の美しさだけではない。高さと幅が50センチほどの生け垣の帯おびの中ほどでは、密集する皐月の枝と葉の間をくぐり抜けてその上に顔を出し、雨に濡れる緑葉としっとり潤った花の白が印象深い。皐月との背伸び競争に勝ち越して咲かせた花は勲章のように輝く。何という根性か、その生命力に脱帽したのは昨年の梅雨時であった。

そんな光景が今年はひと月も早く前倒しして見られた。だが、根性の花は白い花であっても乾いた空気と葉の中での白は、梅雨に煙る中で輝いた昨年とは趣(おもむき)が違って残念であった。

ドクダミだけでなく梅雨時には白い花が映える。芳香を放つジャスミンにクチナシ、頭巾(ずきん)をかぶった法師に見えるヤマボウシ、花菖蒲、カラー、水辺の睡蓮、本命のアジサイなどなど。そのどれだけが今年の梅雨とタイミングを合わせて花咲かせられるだろうか。

〈六月や水辺の花のみな白く〉 三城佳代子