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家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司
具沢山の味噌汁と卵でフレイル予防(下)
”完全栄養食品”と言われる卵
医師で作家の鎌田實(みのる)先生は、長野県で病院勤務の傍ら「健康づくり県民運動」を推進され、長野県を平均寿命日本一に導かれました。その成功要因は、”具沢山の味噌汁”と”卵”の摂取によってフレイル予防を徹底したことにあったそうです。
先月号では”味噌汁”の話をしたので、今回は”卵”についてお話します。
フレイル対策には良質なたんぱく質の摂取が不可欠です。たんぱく質は肉・魚介類・卵・大豆製品・乳製品・野菜・穀類などから摂取できますが、鎌田先生は特に、手軽で良質なたんぱく質と、多くの栄養素が取れる”卵”を推奨しています。
卵が”完全栄養食品”と言われる理由は、たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラルなど、人間の体に必要な栄養素のうち、炭水化物とビタミンC、食物繊維以外のすべての栄養素を備えているすごい栄養食品だからです。
ご存じのように、たんぱく質は私たちの体(筋肉・骨・血液・臓器・皮膚・髪など)をつくる材料であり、また、ホルモン・酵素・抗体など、体の調節機能成分なので、不足すればたちまちフレイル(虚弱)な体になります。
すべてのたんぱく質は「アミノ酸の連なり」ですが、人体に必要な20種類のアミノ酸のうち、9種類の「必須アミノ酸」は体内で合成できないので、食物から摂取しなければなりません。9種類のうち1種類でも不足するとたんぱく質合成が制限されます。
その点で、卵は必須アミノ酸9種類のすべてが基準値より多く含まれていて、たんぱく質合成に100%活用できるすごい食品なのです。
必須アミノ酸の中でも、筋肉をつくるために不可欠なBCAAという三つのアミノ酸があります。それらは赤身魚の刺身や鳥の胸肉などに多く含まれていますが、卵なら3個で1日の必要量を確保できるそうです。
認知症予防、美容にも良い卵
また、卵にはレシチンという脂質が豊富に含まれています。レシチンに含まれるコリンは、脳の中に入るとアセチルコリンという神経伝達物質になり、これが不足すると認知機能が低下します。従って、卵は認知症予防にも効果が期待できるのです。
さらに、卵には美容に関係する栄養素も含まれています。ビオチンやレチノール、ビタミンEは皮膚の新陳代謝を促進し、肌荒れを防ぐなど、肌の健康維持をサポートしてくれます。
ところで、「卵はコレステロール値が上がる」と敬遠されることもありましたが、鎌田先生によれば、1日3個ぐらいまでなら血液中のコレステロール値は上がらないとのことで、すでに厚生労働省や学会も認めているそうです。
ただ、女性は閉経すると「高脂血症」になりやすく注意が必要なので、たんぱく質を取る方法や量は、各自の事情と体質に合わせて決めればよいと思います。
鎌田先生によれば、実際のところ、コレステロール値よりも、たんぱく質不足で筋肉が衰える「フレイル」現象のほうがもっと恐いそうです。
養鶏の歴史と私たちの健康
エジプトでは3500年前、ローマでは2500年前に、野鶏を品種改良して毎日産卵する鶏がいたという記録があります。鶏は観賞用としても飼育されていたそうですが、商業用の採卵養鶏は1850年代にイギリスで始まったようです。
日本には、約2500年前に中国から朝鮮半島を経由して、鶏が伝えられたと言われています。
雄略天皇の時代には鳥飼部(とりかいべ)という鳥類を飼育する民がいたので、養鶏が行われていたことが分かります。その当時、鶏肉は食用に、鶏卵は食用や薬として利用されました。
江戸時代になると”卵売り”も現れ、病気の時の滋養食として重宝されましたが、高価で庶民には手の届かない高嶺の花だったようです。
日本で庶民が卵を気軽に食べられるようになったのは昭和30年代のことです。
食生活の欧米化と共に、たんぱく質やカルシウムが重視され、肉・牛乳・乳製品と共に卵の消費量が一気に拡大しました。
ちなみに、鶏卵は赤卵も白卵も栄養価がほとんど同じで、有精卵も無精卵もほぼ同等だそうです。また、うずらの卵は鶏卵より栄養価が高いようです。
栄養価・値段・料理法…卵は三冠王
卵はこんなにも栄養が豊富なのに安価であり、長い間”物価の優等生”でした。
しかも、料理法が超簡単なので、実にありがたい食品です。私も多忙な時は「卵かけごはん」か「目玉焼き」で、時間がある時には「卵焼き」にして食べています。
たんぱく質の体への吸収効率から言うと、生卵か半熟で食べるのが良いそうです。
以上、3月号から3回にわたってフレイルとその対策について考えてきました。
人生には避けて通れない「老化」や「病気」との闘いがあります。愛する家族のためにも、また、抱いた夢や志を実現するためにも、自分の体に合った方法で賢く栄養を取り、頭と体をよく動かして、心身ともに元気で過ごしたいものですね。