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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(32)

チョッとためになる健康のお話(32)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

魔法の作業服

今年も記録的な猛暑でした。室内はエアコンを使えば、暑さで苦しむことはありませんが、屋外で作業する方々は大変です。2、3年前からファン付き作業服をよく見かけるようになりました。先々月号でも気化熱の話をしましたが、気温が高くなると、「皮膚温」も上がってきます。しかし、「体温」が上がることはありません。常に摂氏36度前後に保たれています。35度よりも低くなることを「低体温症」といい、25度を下回ると死に至ります。一方、高温になると風邪を引いたようになり、動けなくなってしまいます。皮膚は外の熱が体内に伝わらないように防ぐバリアの役割をしてくれているのです。

気温が高くなって、皮膚温が33度を超えると、脳の体温調節中枢が作動して、必要な量の汗を汗腺から分泌させ、汗を気化させて皮膚温を下げるようにします。ところが、気温が上がって汗をかいても、湿度が高いと気化しづらいので、皮膚温が下りません。そのため、さらに汗をかきます。この状態が続くと、体内の水分や塩分が奪われて体調を崩します。これを「熱中症」と呼びます。充分水分補給をして、汗が出るようにすることが大切ですね。

気温が30度だと暑く感じ、同じ温度のお風呂に入ると寒く感じるのはなぜでしょうか。それは密度の差があるからです。空気の密度は低いので、容易に皮膚温は逃げないのですが、水の密度は高いので、熱が逃げて寒く感じるのです。

ファン付き作業着ができたのは2004年でした。その時は、ファンの性能が低く、それほどヒットしませんでしたが、この作業着には汗臭さを消してくれる効果があることが分かりました。汗臭さは、皮膚の表面に住みついている常在菌が汗によって繁殖し、発生する臭いです。この作業着を着ることによって、汗の気化が促進され、常在菌の繁殖を防いでくれるのです。汗臭で悩んでいる方には、おススメです。

段々とファンの性能が良くなり、リチウムイオン電池を搭載した作業服ができると、今まで4時間ぐらいしかもたなかったのが、8時間もつようになり、爆発的に売れるようになりました。驚くべきことにリピート率が99%だそうです。1回使った方は、もう手放せなくなる「魔法の作業服」となったのです。

この商品は、年々気温が上がって、家ごと、ビルごと冷やすより、人間一人ひとりを冷やす方が省エネになるという動機から作られました。エアコンのように寒い風を当てるのではなく、「うちわ」の原理を使って冷やすので、健康にも良いと思います。今では作業着だけでなく、普段着としても着られる商品が出てきているので、いろいろな場面で使われるようになるでしょう。

最近は、手に小型の扇風機を持って歩いている人が多いですね。昔は扇子やうちわであおいでいましたが、そういう人はほとんど見かけなくなりました。ちなみに私は、ハンカチ派です。汗をぬぐった後、小さく折ったハンカチをパタパタさせてあおぎます。結構それで涼しくなります。タオル地のハンカチを持っている人を多く見かけますが、拭いた汗が乾かず濡れた状態が続くので、私は使いません。ハンカチは汗をぬぐった後に、ズボンのポケットに入れていても自然に乾いてしまいます。ですから、私のズボンのポケットには必ずハンカチが入っています。手を洗った後にも使いますが、夏は扇子に早変わりします。

次回は人間の最大の臓器と言われる「皮膚」についてのお話をします。