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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」チョッとためになる健康のお話(33)

チョッとためになる健康のお話(33)local_offer

健康アドバイザー 上杉和彦

皮膚は六番目の臓器

最近、暑い期間が長いので、衣替えがいつなのか分かりにくくなっています。春から夏にかけて、半袖を着たくなる最高気温の目安が22度です。夏から秋にかけて、半袖ではちょっと寒いと感じるのも、これくらいです。秋から冬にかけて、コートが必要になる最高気温が15度。冬から春にかけて、コートがなくてもよいと感じるのも15度前後です。夏服、冬服への衣替えの時期は、東京で見ると5月初旬と、10月下旬となります。ただ、日中の最高気温の平均ですから、朝晩は長袖や上着が必要な時もあるでしょう。天気予報を見ながら、この数字を覚えておくと便利です。さらに考慮する要素は、暑がりのタイプと寒がりのタイプ、そして年齢です。私も40代までは冬でもズボン下は履きませんでした。高齢者がズボン下を履いているところを見ると、「年寄りにはなりたくない」とバカにしていましたが、自分が
50代になってみると、寒さでゾクゾクし、風邪をひきそうになります。新陳代謝の低下によって体温も低くなっているのか、あるいは皮膚の機能が衰えて外気温の影響を受けやすくなったのかもしれません。

皮膚は臓器と言われています。時代劇で、酒を飲みながら「五臓六腑に沁みわたる」と言う場面が出てくることがあります。五臓とは、肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓のことを言い、六腑とは、胆のう、小腸、胃腸、大腸、膀胱、三焦(西洋医学では該当しない臓器)のことを言います。五臓は中身が詰まっている臓器で、六腑は中身が空洞になっている臓器です。

そして、皮膚は六番目の臓器なのです。体の外と内を隔てる皮としか見られていませんが、痛みや痒みという感覚を持っていたり、皮脂というあぶらをつくったり、汗や毛、爪をつくります。「痒い」という感覚がなぜあるかというと、寄生虫や虫が皮膚から侵入したら気づくようにするためです。そして、痒いところをかくと気持ちよく感じます。外敵の侵入を防ぐ時、かいて痛みが生じたら、かくのをやめてしまい、やすやすと侵入されてしまいます。ですから、「かくと気持ちよい」という神経が埋め込まれているのです。皮膚の重さは体重の約16%です。臓器の中で一番大きいのが肝臓で、重さは体重の約2%と言われているので、皮膚が占める割合の大きさがよく分かります。

皮膚には大事な役割があります。それは、体内の水分が外に逃げないようにすることです。やけどで皮膚の30%以上を失うと死に至ると言われています。その理由は、体の中の水分が外に漏れてしまうからです。また、花粉やほこり、菌などが侵入するのを防ぐバリアの役割も果たしています。

そこで一番大切なのが、皮膚の一番外側にある「角質」です。お風呂に入って皮膚を温めた後、こするとはがれてくる「あか」です。ラップ1枚分ぐらいの厚さしかありません。ここが健康になっていないとアレルギーになります。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、ぜんそくの原因物質は口からだけでなく、皮膚からも入ってくることが医学的に明らかになっています。皮膚は目に見える臓器なので、美容の面でも注目されますが、健康にとっても非常に重要な役割を担っています。

腸と皮膚は密接な関係があります。アトピー性皮膚炎の場合、腸内の善玉菌が増えて健康になると、皮脂腺が正常に働き、「玉のような汗」をかくようになります。これが治癒の目安と言われています。次回は「毛」です。