人生を豊かにする金言名句(46)local_offer金言名句
ジャーナリスト 岩田 均
百聞は一見にしかず
日常生活の中でも自然に使っていると思います。英語でも習った記憶がある名句です。”Seeing is believing”ですね。
ある先輩が歌舞伎を見てきて、感想を熱く語ってくれました。「席は最上階の後ろの方だったけれど、やはり生がいいと思った。テレビ中継で見られると言っても、会場にある独特の空気感は伝わらない。観客がどこで拍手をして、どこで笑い、泣くか。テレビでは分からないよ」
私も歌舞伎を見たことがあるので、同感できました。音楽もそうですね。テレビ番組を視聴しても楽しめますが、コンサート会場に行って鑑賞したいというのが正直な気持ち。感動で体が震えたり、時に涙がこぼれたり、生ならではの醍醐味です。
出典は、古代中国の『漢書(かんじょ)』の「趙充国(ちょうじゅうこく)伝」です。「前漢王朝の時代…異民族の攻撃に際して対応策を問われた老齢の将軍、趙充国は、『百聞は一見に如(し)かず』」と言って、「自分が現場に駆けつけて指揮を執りたいと願い出た」そうです(小学館刊『故事成語を知る辞典』)。
さらに、これを「経験の大切さを説いた言葉」(三省堂刊『故事ことわざ・慣用句辞典第二版』)とする解説もあります。つまり、「何かを知ったり理解したりするには、人の話を何度も聞くよりも、一度でも実際に自分の目で見て確かめたほうがよい」(同)と。
会社で新しいシステムが導入されました。慣れていたシステムを止(や)めて、4月から別物になりました。準備期間はあったし、マニュアルも読んでいます。ですが、本番になってみると、”こんな変換なぜ?”というトラブルが次々に発生しました。ベテラン社員は”そんなものだよ”と柔軟に対応できますが、それはキャリアというもの。つまり、「経験の大切さ」になります。
そうそう、このことわざは高校受験に出ることがあるそうですよ。生活の中で実感していれば、理解は問題なしですね。