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APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」愛の知恵袋 157

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家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司

愚痴の活用法

体に一番悪いのは何だろう?

ある会合のあと、何人かの中高年の男性たちと談笑していた時のことです。

健康の話から始まったのですが、「何が一番体に悪いか」という話題になりました。たばこ、飲酒、偏食、運動不足、睡眠不足、肥満…等々、いろいろとあげられましたが、結局、「一番よくないのはストレスではないか」という話になりました。

理由は、体だけでなく心もむしばまれてしまうので、最も深刻だというのです。

確かに、今や、死亡原因の第1位は「がん」ですが、がんの発病を促す最大の要因は「長期間のストレス」です。ストレスで免疫力が低下し、がん細胞が増殖するためです。

また、最近、非常に増えているのが様々な精神疾患ですが、その代表的なものが「うつ病」です。これも、職場や家庭内での葛藤によるストレスが引き金になって起きることが多いのです。

妻の愚痴に困惑する夫たち

「たばこより 体に悪い 妻の愚痴」

これは「サラリーマン川柳」の第16回コンクールで第1位に選ばれた作品です。

情景が目に浮かぶようで私も思わず笑ってしまいましたが、言い得て妙の一句です。

ついでに、今年、第34回のサラリーマン川柳の入賞候補100選には、新型コロナ時代を反映した作品が多く寄せられていましたが、同じような作品がありました。

「会社には 来るなと上司 行けと妻」

「耳痛い 常時マスクと 妻の愚痴」

「マスクでは 防ぎきれない 妻の愚痴」

どうやら、世の夫達は妻の愚痴に困惑しているようです。もちろん、夫の愚痴に苦労している妻達もいるはずですが、やはり、愚痴のグランプリでは到底、女性にはかなわないようです。

職場でも家庭生活でも、ストレスは際限なく湧いてきます。それを如何に上手にこなしていくかが、心と体の健康に大きく影響していくことになります。

がんやうつ病になったいきさつを聞いてみると、数カ月、あるいはもっと長い期間、仕事のトラブルや家庭内の人間関係で葛藤していた…という人が多くいました。

しかし、葛藤を抱えても心身の病気になる人とならない人がいます。それは、溜まったストレスをうまく発散できた人と、できなかった人の違いでしょう。

何でも話せる心の友をつくろう

生真面目、人見知り、潔癖症、神経質、完璧主義者、悩みを内に抱え込んで我慢する人…などは特にストレスをため込みやすいかもしれません。しかし、そんな人でも、家族や友人の中に何でも話せる「心の友」をつくれば大丈夫です。

気が落ち込んだら、その都度、電話で話したり、ランチやお茶を共にして愚痴を聞いてもらって発散できるからです。しかし、そういう信頼のおける友達がいない場合は、全てを内面にため込んでいくことになり、やがて、心身の不調を引き起こすことになります。そういう意味では、「愚痴にはストレス解消という大きな効用がある」と言えます。

子供だって、ストレスがある

ストレスというと大人だけだと思われがちですが、子供にもストレスはあります。

特に、小学校に上がったばかりの1年生などは、緊張で相当のストレスがあります。

母親は子供になんでもしゃべらせて、よく聞いてあげましょう。それを怠っていると、子供はストレスが溜まって、ある日突然、「学校に行きたくない」と言い出します。

子供は学校で少々の不満があっても、母親がよく聞いてくれれば転換できます。

お父さんには赤ちょうちんがあり、お母さんには長電話やお茶友だちがあるように、子供にもストレス解消の場が必要なのです。

最後に、私の考案した「愚痴名人3カ条」。まず第1に、言う相手を間違えないこと。第2に、言い方を研究すること。そして第3に、言う時と場所を選ぶこと。

夫も妻も愚痴は伴侶か、親友か、祖父母に言いましょう。間違っても、子供に愚痴を垂れ流してはいけません。子供の愚痴を聞いてあげるのが親の役割なのですから。

子供は父親の母親への愚痴や、母親の父親への愚痴を聞かされるのは非常に嫌なのです。それが親への不信感になったり、非行に走る原因になることもあります。

ですから、夫婦はお互いにおおらかな気持ちで、相手の愚痴を聞いてあげることができる夫と妻になりましょう。そこで”愚痴のスキル”を磨くのです。

相手を不快にさせない上手な言い方、相手が得心できる上手な聞き方、そんな秘訣が身につけば、ストレスは全て解消され、心の通じ合う親友夫婦になることができます。

参考文献:『サラリーマン川柳』第一生命編、『ごめんなさいが言えますか』エンゼル出版