人生を豊かにする金言名句(43)local_offer金言名句
ジャーナリスト 岩田 均
ごみを跨(また)ぐな
社内でごみを見つけたら拾いましょう」――。働いていた会社の社長が呼びかけました。だいぶ以前のことです。その社長は「私もごみを拾うよ」と言って実践していました。”自ら拾うのか”と思い、驚いたのを覚えています。
米大リーグのスーパースター、大谷翔平選手は素晴らしい成績を残しているだけでなく、その信条や生活スタイルに見習う点があることで知られています。高校時代に作ったという「目標設定シート」があります(大谷翔平著『不可能を可能にする大谷翔平120の思考』ぴあ株式会社)。「運」という欄には「あいさつ」「道具を大切に使う」などの実践項目が並んでいて、同書によれば「ゴミ拾い」もその一つでした。
俳優の哀川翔さんは、「ごみを跨ぐな」が家訓で、お子さんのしつけの一つだそうです。見つけたら拾ってごみ箱に捨てようという意味です。このエピソードはインターネット上のあちこちで紹介されていました。「ゴミを拾うことは運を拾うこと」と言う人もいるそうですが、あまり打算的に捉えず、結果として「幸運」が巡ってくる、くらいに考えたいものです。
私もいつのころからか、ごみを跨ぐことができなくなりました。会社や家庭の中でごみを見つけると拾います。運を拾うとまで考えたことはありませんが、”人生のやすり掛けだ”という気持ちはあります。
やすりを掛けるというのは、とがった所を丸くしたり、粗い面を滑らかにすることです。爪を切った後もそうです。やりたがらない人もいますが、服などに引っ掛からないよう爪の断面を滑らかにします。あるいは彫刻づくり。やすり掛けは重要な工程ですね。出来栄えを左右します。それも、プロと素人とではスキルのレベルが相当に違います。
とはいえ、自分の内面にも関わること。素人レベルでいいよねと考えて、それが幸運に近づいているかもしれないと思って、ゴミ拾いをしたいと思います。