人生を豊かにする金言名句(49)local_offer金言名句
人生を豊かにする金言名句(49)
ジャーナリスト 岩田 均
不完全のゆえに愛着が湧く
大阪で万博が開催されています。先日、仕事で親しくなった人に会ったら、「万博に行ってきましたよ。来場者がいっぱい。それでも、2日間で15くらいのパビリオンに入りました」と嬉しそうに話していました。身近な人の体験談を聞いて、万博への関心が高まった気がしました。
そんなことがあって数日後、テレビ番組に出演していたのが佐藤オオキさんという方(日テレ『アナザースカイ』)。誰だろうと思ったら、万博・日本館の総合プロデューサーでした。デザイナーで建築家の佐藤さんは、東京オリンピック・パラリンピック2020の聖火台をデザイン。海外でも著名で、フランス新幹線「TGV」の新モデル(来年運行予定)の内装全体を担当しました。
そんな佐藤さんの言葉からの引用です。番組で佐藤さんは、漫画「ドラえもん」に出てくる万能道具について「完璧ではない」と紹介しつつ、自身の理想の創作について「不完全なデザイン」と表現しました。だからと言って、未完成品とか失敗作を残すという話ではありません。その段階では最高点であっても、時間が経過してみると不足が見えてくるというニュアンスが含まれているのでしょうね。
それで思い出したのは、ドイツ自動車の性能です。「ドイツ車は不完全だ」と言ったのは、ドイツ在住が長い友人でした。似たような説明は、最近行った日本の中古車センターでも聞いたので、あながち的外れではないようです。
その友人いわく、日本車は新車の段階から「完全な状態」なのに対して、ドイツ車は乗りながら少しずつ修理を加えて「完全になる」と。目安は「走行距離が5万キロ前後」だそうで、それまでは何度でも(?)修理工場に行くことになります。ドイツ人は、長く大切に使う気質があって、直しながら良いものにしていくようです。
佐藤さんが「今後やりたいこと」は、「失敗したい」だそうです。これも無茶な話ではなく、失敗を恐れず「思い切ったアイデアでやりたい」という気持ちがあるから。その時の楽しそうな表情が印象的でした。