機関誌「真の家庭」publication

APTF 公式サイト機関誌「真の家庭」人生を豊かにする金言名句(51)

人生を豊かにする金言名句(51)local_offer

ジャーナリスト 岩田 均

深い読み 読む脳を育てる

今回は読書がテーマです。ところで、読書感想文と聞いて、どういう思い出がありますか。「楽しかった」と言う人もいるでしょう。今の学校教育で実施されているかどうか知りませんが、私が小中学生の時代は、夏休みの宿題の定番。正直言って嫌いでした。読書が苦手だし、どうにか最後まで読んだとしても、文章が浮かんできませんでした。

メアリアン・ウルフさんという米国の神経科学者がいます。この方のアドバイスをもっと早く知りたかったと思う内容があります。

「(本を)読み続けながら批評眼を養い、時代も文化も違う作者とも想像力を働かせて『対話』し、作者の思いに共感したうえで自分の思想を築いていく」(読売新聞2020年7月12日付インタビュー記事)

これは大人に要求されるレベルでしょうけれど、「深い読み」を説明しており、それを育むことが大切だということです。ウルフさんは、読書嫌いはダメだと言っていません。ただ、「文章を読み進めながら仮説を立て、仮説が正しいのか間違っているのか、次第に判断できるようになる。作者や登場人物の感情や考えに思い当たるようにもなる」(同)という読み方を期待しています。

その結果として、「考えの違う他者の存在を認め」るようになり、さらに進んで「基本的人権の尊重につながる」と語っています。こんな視点で読書ができたら素晴らしいですね。

今日、デジタル時代に突入しました。最近、文部科学省の審議会でデジタル教科書が承認されたというニュースがありました。電子図書など「利便性」「速度」などの追求が期待される一方で、失われるものはないかと心配されます。

紙の新聞を読む効用について、モデルでタレントのゆうちゃみさんは、「今までそんなに関心がなかった分野の記事も、見出しをきっかけに読むことが増え」(読売新聞24年10月14日付)たそうで、「新しい知識へとつながっている」(同)と言って推奨しています。

本誌も、小型版とはいえ紙の媒体の一つ。「読む脳」を育てるのにきっと役立っています。