人生を豊かにする金言名句(55)local_offer金言名句
ジャーナリスト 岩田 均
いのちの唯一の目的は成長することにある
エリザベス・キューブラー・ロス(精神科医、1926~2004年)の言葉です。スイスで生まれ、米国人と結婚して渡米。いくつかの大きな病院で勤務しました。末期患者への面接内容をまとめた著書(『死ぬ瞬間』中公文庫、鈴木晶訳)が有名ですが、今回の言葉は『人生は廻る輪のように』(角川文庫、上野圭一訳)に登場します。彼女の自伝でもあります。
キューブラー・ロスはたくさんの「つらい経験」をしています。例えば同書によると1994年に自宅が放火され全焼してしまいました。「資料も原稿も宙に消えた…胸がつぶれる思いだった」と絶望の淵に立たされます。ところが、「まる一日、ショックから立ちなおれなかった」と述べつつも、わずかな時間を経て「逆境だけが人を強くする」と奮起します。強靭な精神力の持ち主です。ただ、その考え方には「なるほど」と思わされます。「わたしはそれ(火事)を受容した…失ったものはものにすぎない」と割り切り、「生は学校に通うようなものだ。幾多のレッスンを課せられる」と達観したように語っているのです。
筆者も、火事の現場をすぐそばで、それも何度か目撃したことがありますが、他人の家であっても心の動揺は小さくありません。キューブラー・ロスは、火事は自分を滅ぼせなかったと考えて、「いのち」があることの重要さに目を向けます。「いのち」の目的は「成長することにある」のだから、人生を「卒業」して死の先にある世界へ行くために、「無条件に愛し、愛される方法を身につけること」が究極の学びだと強調します。末期患者の死生観から得た結論なのだと感じました。
『まぎわのごはん』(小学館文庫、藤ノ木優著)という本があります。「まぎわ」という名の「病人ばかりを相手に食事を振る舞う、少し変わった食事処」が舞台です。主人公は若き料理人。死と向き合うことに躊躇し、余命宣告された人に出す料理づくりで悩み続けます。そんな中、「他人のために何かをしようと考えるのは、いい兆しだよ」とか、「無理に能力以上の事をやろうとするより、できる事をきちんと」など、人としての成長を後押しする言葉に励まされる場面があります。自分のためではなく、他人のためにと思えたら、それは「成長」している証しだと思いました。
