家庭問題トータルカウンセラー　松本 雄司

自然で豊かな性生活をめざして

性生活についての夫婦の悩み

ある40代の男性の相談を受けた時のことです。どことなく元気がありません。

「最近は何かにつけ、妻と衝突することが多くなって憂鬱です」と言います。

よく聞いてみると、妻は出産以後、ほとんど夫のことを考えてくれないようで、もう３年も性生活がなく、心の底に妻への不満や恨みが渦巻いているようでした。

一方、近年は女性からの相談も多くなってきました。ある30代の女性は、「もう２年間も性生活がありません。夫は仕事で余裕がないのか、無口で疲れた様子です。夕食が終わるとすぐ自分の部屋に入って、ネットを見て寝てしまいます」と言います。

セックスレス夫婦の増加

世界最大手の避妊具メーカー・デュレックス社が2008年に公表した「世界各国の夫婦の性生活の実態調査」では、年間平均セックス回数はギリシャが年164回で第１位。世界平均は103回、日本は48回で世界最下位でした。また、性生活の満足度でも、満足だと回答したのは世界平均の44％を大きく下回る24％で、ワースト２位でした。

直近の2024年の同調査でも、「週一度以上セックスをする」と答えたのはインドネシアが87％で第１位、日本は23％で最下位。また、「性生活に満足している」と答えた人はインドが72％で第１位、日本は23％で最下位でした。

これらの調査で分かったことは、日本人は満足な性生活を望んではいるが、実際には性生活に対して何かとこだわりが多く、ぎこちないという傾向でした。

さらに、そのことを示す調査結果が近年報告されています。それはレゾンデートル社が2023年に日本の20代～50代の既婚男女4000人を対象に実施した「夫婦のセックスレスに関する実態調査」です。その結果は、「セックスレス」が43.9％、「ややセックスレスの状態」が24.3％で、実に「68.2％がセックスレスの傾向にある」ことが分かりました。この現象は少子化にもつながっており、日本での社会問題の一つとも言えます。

なぜ、日本人夫婦の性生活は貧弱であるのか？

誰でも結婚した以上は「仲の良い夫婦になって、精神的にも肉体的にも喜びを満喫したい」と思っているはずですが、現実にはそれがうまく達成できていません。

なぜ日本人は、諸外国と比べてセックスの回数も満足度も低く、自然な性生活ができていないのだろうか…？という疑問について、私も考察し研究しました。

原因は歴史的文化習慣の違いもありますが、私がたどり着いた結論はこうでした。

「結婚生活の幸福度は、夫婦の愛の交流（コミュニケーション）の親密度にかかっている。そして、夫婦の交流には五つの段階がある。”性生活”は最高レベルの第５段階に当たり、最も高度で大切な精神・肉体両面の愛情交流である。それを醸成する土台となる四つの交流がある。従って、日本人が性生活を自然に感動的にできないのは、そもそも、その土台となる四つの基礎的交流が充分にできていないからである」

四つの愛情交流を増やして、至福の性生活を堪能しよう

夫婦の究極の愛情交流である性生活と、その基礎になる四つの交流は次の通りです。

第１段階＝物のやり取り …（伴侶への気遣い・サービス）

第２段階＝言葉のやり取り …（伴侶との会話）

第３段階＝同伴行動 …（苦労や感動の共有）

第４段階＝スキンシップ …（肌の触れ合い）

第５段階＝性的交流 …（愛のサービス）

つまり、第１～第４段階の交流（サービス）を増やしていけば、結果として、第５段階の交流＝性生活が”自然に””豊かに”できるようになるということです。

われわれ日本人は土台となる四つの愛情交流が非常に不足しているので、当然の結果として、究極の愛情交流である性生活も、単純で味気ないものに終わりやすいのです。

ならば、今日からでも、理想の夫婦生活をめざして基礎交流を増やしましょう！

第一に、物を介した愛情表現を増やすこと…料理を作ってあげる。飲み物を出してあげる。荷物を持ってあげる。お土産をあげる。プレゼントする。家事を分担し協力する…など、日常でのちょっとした気くばり、親切行為を増やしましょう。

第二に、言葉のやり取りを増やすこと…挨拶から愛情表現まで会話の絶対量を増やします。家族や親戚のこと、仕事や趣味、社会の話題までよく話す。お互いの胸の内にある悩みや欲求も伝え合い、感謝や愛情表現の言葉をたくさん伝えましょう。

第三に、同伴行動を増やすこと…散歩や買い物に一緒に行く。趣味やボランティア活動を共にする。一緒に帰省や旅行をする。映画や音楽を一緒に楽しむ。伴侶の仕事に協力する。病気・事故・貧困・借金などわが家の危機に力を合わせて取り組む。

第四は、スキンシップを増やすこと…親愛の情を込めて、肩ポン、握手、腕組み、抱擁、キス、肩もみ、マッサージ…など、日常での肌の触れ合いを増やしましょう。

特に夜寝る前に、愛情をこめて、お互いの体をマッサージしてあげると、身も心もほぐれて、自然に親密な性生活につながっていきます。