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家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司
一笑一若、一怒一老
気がめいる日が続いたら病気になってしまった
ある中年男性と話した時のことです。「こんな時はどうしたらいいんですかね?」と言います。「どうしたんですか?」と聞いてみると、「実は、健康診断で胃腸の精密検査を勧められたので検査してもらったら、胃と腸がかなり荒れていて胃潰瘍や胃がんになりかねない状態らしく、食事のとり方に気を付けることと、ストレスを減らすように言われました」とのことでした。
「何か心当たりがあるんですか?」と尋ねると、「考えてみれば、ここ数年ストレスが多かった。物価高騰なのに収入は減って将来が不安だし、テレビやネットを見ても嫌なニュースが多くて、気がめいって熟睡できない夜が多い」と言っていました。
心と体は想像以上に密接に関係している
日本経済新聞(2019年6月25日付)によれば、山形大学医学部が『笑う頻度と死亡や病気のリスクを分析した調査結果』を発表したそうです。2万人の健診データを収集した山形県コホート研究をもとに分析したもので、「ほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べて死亡率が約2倍高く、脳卒中など心血管疾患の発症率も高かった」と報告されています。
ベストセラー『脳内革命』(サンマーク出版)の著者で医学博士の春山茂雄氏によると、人間の心の作用と身体は想像以上に密接につながっていて、心の持ち方一つで重病になったり、逆に、健康が回復したりすると言われます。
確かに、昔から「病(やまい)は気から」と言われてきましたが、「こころ」と「からだ」がなぜ、どのように関連しているのかは明確には説明できませんでした。
ところが、近年は脳生理学や分子生理学の発達によって、心の持ち方と体への影響が科学的にも立証され、説明できるようになりました。
怒りやストレスは自身を蝕んでいく
春山先生によれば、「人体には、心の持ち方によって体内に生じる物質(ホルモン)があり、特に、アドレナリン、ノルアドレナリン、エンケファリン、β-エンドルフィンなどはその代表である」と言われます。
現代はストレス社会だと言われますが、怒ったり強いストレスを感じたりすると、脳内にノルアドレナリンが分泌されます。このホルモンには強い毒性があり、これが続くと人間は病気になり、老化も進み、早死にしてしまうそうです。
なぜかと言うと、ストレスは発がん率を高めてしまうし、成人病のほとんどは代謝障害、つまり、血液がサラサラと流れなくなることに起因しているからです。
ノルアドレナリンが分泌されると血管が収縮して血流を止め、そのあと活性酸素を大量に発生させて、遺伝子を傷つけたり老化物質を生成したりして成人病を引き起こします。
つまり嫌なことがあった時、怒ったり恨んだり悶々(もんもん)としていると、ノルアドレナリンが出て、もっと悪いことが自身の体に起きてくる……いわゆる、「弱り目にたたり目」という悪循環、負の連鎖に陥ることになります。
プラス思考は幸福と長生きの秘訣
一方、嫌なことがあっても怒りや恨みを持たず、いつもニコニコして前向き思考をすると、脳内には脳細胞を活性化させて体を元気にする良い働きのホルモンが出ます。このホルモンには若さを保ち、がん細胞を抑制し、人を楽しい気分にさせてくれる作用があります。
このような快感ホルモンは約20種類ほどが知られていますが、春山先生はそれらを総称して”脳内モルヒネ”と呼んでいます。そのなかでも最強の快楽ホルモン物質がβ-エンドルフィンですが、その効力は麻薬のモルヒネの5~6倍もあるそうです。
誰でも悔しいことがあれば怒りが湧きます。しかし、それを増幅させずに発想転換し、「いい勉強になった」「感謝、感謝!」「いずれきっと良いことがある」「よし、もっとがんばろう!」と思うと良い脳内モルヒネがあふれてきます。
また、人のために働くのを生きがいにして、感謝されることに喜びを感じ、嬉しく楽しく生きることは、良い脳内モルヒネを引き出す最高の生き方になります。
”一笑一若(いっしょういちじゃく)、一怒一老(いちどいちろう)”
この言葉は精神科医で作家の斎藤茂太氏が提唱されたものですが、元は「笑うことで若返り、怒ることで歳をとる」という意味の中国のことわざから来ているようです。
私たちはカッと怒ればそのたびに自身を害し、また一つ老化してしまいますが、反対に、感謝、感謝で笑っていけば、心も体も快調で大きな夢も叶うようになります。
春山茂雄先生は、著書『脳内革命』の序文でこう述べています。
「神様は私たちに脳内モルヒネを与えて下さっている。これは神様からの次のようなメッセージだと思うのです。『人生を愉快に生きなさい。愉快に生きればいつも若々しく健康で、病気にも無縁で長生きできますよ』と。脳内モルヒネの存在は神様が正しく生きる人間にくれたご褒美ともいえます」
