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家庭問題トータルカウンセラー 松本 雄司
不登校の子との向き合い方
子供の不登校で困っているご両親
あるご夫婦からの相談です。「実は、子供のことで悩んでいます。小学生の子ですが、学校になじめないのか、不登校になってしまいました」とのことでした。
そのお子さんは3年生になってから遅刻が多くなり、やがて学校へ行くことを嫌がりだして、不登校の状態になってしまったそうです。
母親は学校まで付き添ったり、行けたらご褒美をあげたり、あの手この手で登校するように仕向けてきましたが、本人の登校意欲にはつながりませんでした。
父親は家で休んでいる子を見ると、つい叱りたくなって、「皆行っているんだよ、どうして行かないの?」「行かないと勉強できなくなるよ」「将来、社会で通用しない人間になるよ!」などとお説教しましたが、むしろ逆効果だったようです。
不登校の実態と学校の対応
今年10月29日、文部科学省から「令和6年度、児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」が発表されました。病気などによる長期欠席以外の不登校は、
小学校:13万7704人(1000人当たり23.0人)
中学校:21万6266人(1000人当たり67.9人)
小・中学校の合計では、実に35万3970人(1000人当たり38.6人)が不登校。
ちなみに、高校生では、6万7782人(1000人当たり23.3人)が不登校でした。
さらに、とても悲しいことですが、小中高校生の自殺者は、413人にも達しました。
少子高齢化のこの時代。子供は国の将来を担う貴い宝です。令和の教育事情は昭和時代とは全く違ってきており、昔の常識で対応しても、現代の子供たちの心を動かすことはできないので、文部科学省も現場教師もさまざまな努力をしています。
原因の分からない不登校が増えている
各家庭の教育方針には、スパルタ式やしつけ重視の育て方から、ごく普通の対応までいろいろあり、それぞれの子供に受容力さえあれば問題ありません。これから考えたいのはそういう対応が通用せず、不登校になった子供へのあり方です。
いじめ・暴力など原因が明確である不登校なら、それに対処すれば解決できるのですが、最近増えているのは「原因がはっきりしない不登校」なのです。
小・中学生の不登校で、いじめや暴力以外で多かったのは以下の要因です。
①「学校生活に対してやる気が出ない」 ②「生活リズムの不調」 ③「不安や抑うつ感」④「学業の不振や宿題の未提出」 ⑤「親と子のかかわり方」 ⑥「友人関係の不調」
不登校問題に30年間取り組んできた元中学校教師で、「ちばTラボ」代表の千葉孝司先生によると、学校に通えない原因は”子供が抱える不安と負担”のためだと言います。大人は「なぜ、学校に行かないの?」と思うのですが、子供は「行かない」のではなく、心に不安や負担が積み重なって「行けない」のだというのです。
その要因の一つは「昭和的な管理教育の学校」と「令和の子供」のミスマッチにもあると言います。決まった時間にみんなが同じことをする管理型教育は、今の子供たちには苦痛になっている一面があるというのです。
家族みんなでテレビを見たり、広場で一緒に遊んでいた時代と違い、今はそれぞれが自分の好きなゲームをしたり、動画を見たりして自由に過ごす習慣なので、45 分間もじっと座って全員で同じことをする教育スタイルに息苦しさを感じるというのです。
体がすくんで行けない子供たち
千葉先生は、これらの息苦しさからくる不登校は、子供の性格の問題でもなく、怠けているわけでもなく、”体がすくんでいる状態”なのだと言います。
高い所に立つと足がすくんで動けなくなるのに似た心理です。クラスメイトの目が気になってすくんでいることもあります。また、親子ともに生真面目な家庭では「~すべきだ」という意識が強く、親も子も共にストレスをためやすいようです。
まずは子供の不安を軽減し、心をしっかりと安定させてから学校に行けるようサポートしてあげましょう。そのためには、問題が生じたら無理強いをせず「上手に欠席」して、家で一緒に料理をしたり、好きな活動をさせたりして、子供に少しずつ自信を取り戻させることが大切です。
そして、「学校に行こうかな…」と子供が言い出した時には、まず慣れることから始めます。学校の周りを散歩して帰ってくる。校門の前まで行く。次は、教室に行くが「きょうは午前中だけ」というふうに段階を追ってペースを取り戻しましょう。
回復までのプランはその子のペースに合わせて、取り組みは自分で選ばせることが良策です。「とりあえずいつまで休むか」、「フリースクールに行くか、家で学習するか」などを、本人に決めさせます。そうすることで主体性が生まれ、自分で決めたことを自分でやろうと考えます。
今の時代は不登校が決して珍しいことではなく、どこの家庭でも起こり得るので、親子どちらかが悪いわけではありません。
親自身が毎日の生活を楽しく過ごしながら子供に寄り添い、”人生っていいものなんだ…”と思わせてあげることで子供は前向きに生きる力を与えられるのです。
